防府市公会堂│第34回BELCA賞

建物外観

建築物概要 ―Outline of Architecture―

ホール
ホール
ホワイエ

選考評 ―Selection Commentary―

1960年に地域文化の向上を目指して佐藤武夫の設計で建設された公会堂。時計台を併設したモダニズム建築は長く地域のシンボルとして親しまれ、半世紀以上を経て時代に即した機能更新改修と共にオリジナルデザインの維持と融合をテーマとして取り組んだプロジェクトである。

1,600人収容のワンスロープ型ホールを中心に1960年前後のモダニズム建築の特徴を色濃く残した建築のホールは長らく講演や式典を中心に市民に親しまれてきたが地域の吹奏楽需要の高まりなど音楽関係の需要が時代と共に増加して音楽ホール寄りの音響特性に変更。客席空間機能の充実、音響以外のホール諸設備の改良などにも対応している。

オリジナルのホール空間を残しつつ公会堂から音楽ホールへの機能更新に対応するにあたり、残響時間を室容量拡張、反射板、吸音率の工夫で1秒から1.5秒に変更。更に客席一人当たりの寸法的余裕や共用空間そのほか楽屋廻りのユニバーサルな環境改善も行っている。

構造的には必要な耐震性能の確保を行いつつ、オリジナルの建築を損なわないように努めた。この施設の外観で特徴的な「塔」は、改修前、その耐震性能が心配されていたが時刻歴応答解析を実施、その安全性を検証、新たな耐震要素を加えることなく、保存継承可能とした。特定天井に該当する大ホール観客席の天井は、下地鉄骨を補強して準構造化天井を実現。躯体と共に耐震改修促進法の規定による構造評定を取得して、耐震安全性確保を確認し、建築躯体のさらなる長寿命化を図った。

設備計画においては、利用者のニーズに合せて、トイレ空間の拡張、EV新設・諸室新設更新などのサポート機能を充実して環境改善を図っている。

維持管理面は、一時避難場所としての機能維持のための対応、防災性能の現行法適合を行うと共に、今後25年以上の機能維持を目指して主要設備関係はほぼ全面更新、外壁打ち放し部分の中性化抑制処理を施している。また舞台設備の長期更新計画も作成し、次の10年を見据え、設備毎に適切な更新時期を計画している。

本施設の当初設計から今回改修まで3度の大規模改修を一気通貫で同一事務所が担当して建築主の期待に応え、当初の設計意図を着実に継承し、今回の改修でも建設当初のモダニズム建築の継承を一つのテーマとして、様々な課題解決に取り組んだ。 半世紀以上にわたり地域のシンボルとして愛されるモダニズム建築のオリジナルデザインを活かし、時代に即して丁寧に改修されておりBELCA賞にふさわしい作品となっている。

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