しののめ信用金庫 前橋営業部ビル│第34回BELCA賞

建物外観

建築物概要 ―Outline of Architecture―

1階ロビー
2階つどにわライブラリー
3階つどにわホール

選考評 ―Selection Commentary―

JR前橋駅から美しいけやき並木を県庁に向かって歩き、国道17号線を少し北に進んだところにしののめ信用金庫前橋営業部ビルはある。本建物は、1964年に前橋信用金庫本店として建設され、地域の発展を象徴する建物として長く地元に愛されてきた。そして、長い歴史の中で、信用金庫は、3度の合併を繰り返しながらも、常に地域に寄り添って存在し続けた。今回、耐震診断の結果により、建て替えやむなしということで議論が進んでいたが、構造設計者の検討により、壁量のバランスを取り戻すことで耐震基準が満たせることがわかり、改修案で進むこととなった。

本プロジェクトの重要な目標は、地域に根ざす地域金融としての本来の可能性を引き出すことであった。計画初期段階で、エフエム群馬社屋の移転計画を敷地内に組み込み、新たな人の流れやたまりの空間を設け、自社の利益を追求するだけでなく、地域の魅力を高め地域に愛される場を提供することが長期的な視点に立った総合的な発展につながるという考えに基づき、検討が進められたとのことであった。

その考え方は、屋外空間だけでなく建物内部へも展開され、元々2層吹抜だった空間に既存躯体とは縁を切った鉄骨造の2階床が挿入され、「つどにわライブラリー」と名付けられた誰でも自由に利用できるコワーキングスペースが設けられていた。また、3階に設けられた「つどにわホール」は、改修前は、天井を下げて執務室として利用されていたが、今回の改修で2層吹抜の元の姿に戻し、建設当時の荒々しい既存躯体を表し、更に前面道路の緑を取り込むことや新たな開口部を設けることで、魅力的な空間として蘇り、地域の様々な活動に利用されていた。4階には、建て替えでは認められず、既存の改修であれば特例的に認められるという金融業以外のテナントスペースが設けられ、優良なテナントを誘致し賃料収入を得ることにより、持続的な施設運営と維持修繕費用を確保するという事業スキームも運営面での一助となっていた。 建て替えではなく既存改修に踏み切り、前橋市アーバンデザインの方向性と連動しながら、地域の中の「中継拠点」として居心地の良い場を創出し、セキュリティ上の制約がある中で、地域に開かれた金融機関の営業窓口の新たなあり方を提示している点は、高く評価できる。また、所有者・使用者である、しののめ信用金庫の技術者と、改修設計者、施工会社とが、定期的に連携を取りながら、継続的な運営及び維持管理が行える体制を整えられていることで、地域住民の声に応えながら更に積極的な場の活用が進んでいくと思われる。今後、地域の中に眠る様々な価値ある建築物が再生され、点と点が結ばれ線となり、更には面となることで、前橋の魅力向上につながっていくであろう

ページ上部へ