日本プレスセンターは、日本記者クラブや日本新聞協会などが入居する日本の報道界の中枢施設として1976年に竣工した。年月を経た今でも、中央官庁街と日本を代表する業務・商業ゾーンが交差するエリアに、日比谷公園を前にして、竣工当時のまま変わらぬ堂々とした姿で建っている。
設計においては、建物の長寿命化も課題にされていた。一般階では、多様な利用に柔軟に適応できるユニバーサルな空間に計画され、長寿命化が図られている。階層構成でも固定的な利用の空間とフレキシブルなオフィス空間が明快に分離されている。そして外観は屋根がボールト状という特徴的なデザインであるが、今では地域の景観に馴染んでいる。古典的なコードを現代的に解釈した奇を衒わない明快な構成のデザインが効を奏している。
また各部位のディテールや仕上げ材の検討が、長寿命化を目指して設計者と施工者が一体となって究められている。例えば、外壁も屋根も白色タイルで覆った外観であることから、タイル仕上げの納まりが課題になり、タイル形状をはじめとして漏水防止やエフロ防止の工夫が行われた。今でも建物性能維持にその当時の工夫が生きている。そして竣工時からの内装材のままの場所が多いのは、丁寧に使われてきたからでもあるが、長寿命を意識した材料選択が有効だったことが大きいと思われる。
ところで新築時の工事費はデザインやディテールなどに伴う必要なコストが見込まれた価格だったとのことで、建物の長寿命化には安値発注でなく見識ある妥当な発注が重要だということを教えてくれている。
本建物の所有者や管理者には建物の長寿命化を目指す意向があって、1989年に中長期維持保全計画が策定され、その後、この計画に基づいて工事がきめ細かく実施されている。またその中長期保全計画には随時、日常点検の報告、耐震診断や環境配慮などの時代の要請などが反映されて見直しされている。今後も確実に建物性能の維持保全工事が実行されるとのことである。
主な改修工事としては、DHC熱源受け入れ改修、各階空調機への全面更新、各階のトイレやEVホールなどの共用部改修、昇降機更新であり、外装タイルのシール打替え補修等も計画に基づき実施されている。また高効率照明器具の採用などの省エネルギーを考慮した改修工事実施と共に、運用上も中央監視システムによる24時間監視体制で効率的な省エネルギー活動に取り組み、CO2排出量の削減に努めている。
ロングライフを単なる築後年数だけで評価するのは難しいが、まずは所有者等が建物の長寿命化を強く意識しているか、保全工事を計画的に適切に実施しているかどうかで評価が分かれると考えられる。
今回の日本プレスセンターは、竣工後34年の建物であるが、所有者等には建物や景観を大事に維持してゆくという意思があり、設計から施工そして維持管理において建物の長寿命化が常に関係者に共有化されていた好例である。BELCA賞のロングライフ部門の建物として評価できる。
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