20回BELCA賞ロングライフ部門表彰物件

NTT西日本 兵庫支店 芦屋別館

所在地 兵庫県芦屋市大枡町5−23
竣工年
(改修年)
昭和4年(西暦1929年)・改修 平成17年(西暦2005年)
建物用途

レストラン&ウェディング施設(改修後)
電報電話局(改修前)

建物所有者

西日本電信電話
劾TT西日本アセット・プランニング
潟mバレーゼ

設計者 劾TTファシリティーズ
施工者

森田組
劾TTファシリティーズ(改修)

維持管理者

劾TTファシリティーズ
潟mバレーゼ

 この作品は、昭和4年当時、兵庫県芦屋に「逓信省郵便局電話事務室」として竣工した建物を80年の長きにわたり、維持保全、改修し、今も時代のニーズに応えるものとして活かし続けているという点で、ロングライフ部門のBELCA賞にふさわしいものである。
 高級住宅地として、全国的にも有名な「芦屋」という好立2地を生かし、1階にはレストラン、2階にバンケットルーム、また中庭には新たにチャペルを増築し、会食、会議用、ウェディング施設として利用されている。
 1階正面は元々、電話局の営業窓口として使われていたが、大きなアーチ型の窓を持つ側廊がバルコニーのように走り、内部の営業スペースを改装したレストランに、重厚感溢れる気品と、落ち着きを与えている。2階は元々電話交換機が並ぶ、天井高の高い空間であったが、この広さと高さを生かし、天井にグレーペンミラーを張り、シャンデリアを設けてバンケットルームに変身させている。中庭のチャペルは、この建物をウェディング施設とするために、後から建てられたものである。旧局舎がスクラッチタイル張りという重々しいファサードであるのに対し、こちらは全面ガラス張りの軽快な建物で、その対比が面白い。また旧局舎の大小の執務スペースは、会議室や親族の控え室として改装されている。
 建築の遺構を損なうことなく、現代の用途に合わせた照明、空調、防災設備の設置にも秀でた工夫がされている。特にレストランの雰囲気照明、宴会場のシャンデリアや音響設備などは、改修したことを感じさせない趣のある出来映えである。またリニューアル工事には付き物の、設備の露出配管や壁貫通などにも、最小限にして目立たせないような配慮がされている。また増築されたチャペルは、自然光による照明効果を使うことで、清楚で開放的なイメージだけでなく、省エネにも貢献している。
  しかしながら、この局舎は大きな変遷を乗り越えて今に至っている。先の大戦中、防空目的から外壁全面にコールタールが塗布された。戦後、これは除去されたが、替わりにリシンが塗装された。1980年代になって、旧局舎の文化的、史的価値が見直され、耐震改修工事と共にリシン、コールタールの剥離および外装材の復元工事が行われた。また終戦直後の高度成長期には、一部3階部分の増築が行われ、またその後、南側への増築も行われた。時代の大きなうねりを乗り越えて、古き良き火を消さずに今に伝える努力に敬意を表したい。
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