第17回BELCA賞ロングライフ部門表彰物件 |
サッポロビール博物館 |
所在地:札幌市東区北7条東9-2-10 |
竣工年:1890年 (改修年):1987年、2006年 |
用 途:博物館・飲食施設 (改修前)製糖工場、ビール用製麦工場 |
建物所有者:サッポロビール |
設計者:サンガーハウゼン社、北海道庁建築課 |
施工者:元施工者不明 大成建設梶i改修) |
維持管理者:日本管財 |
サッポロビール博物館は、北海道開拓の歴史を刻むレンガ造の産業遺産として札幌苗穂地区の工場・記念館群の一つに数えられている。1890年(明治23年)、旧北海道庁舎と同時期に、ドイツ・サンガーハウゼン社の設計によって精糖工場として創建され、その後、麦酒工場、サッポロビール園へと転用を繰り返し、1982年にサッポロビール博物館として再出発するに至っている。その間、取り壊す議論もある中で保存の決断をし、1986年にレンガ建築の外観を将来に亘って存続させるための大規模な改修に着手した。 大改修にあたって、80cm厚のレンガ造外壁を構造壁としては使わず、その室内側に独立の構造柱を新設し、既存床スラブをレンガ壁の振れ止めとして活用、鋳鉄製の中柱はコンクリートで巻いて補強し、屋根と木造小屋組みを鉄骨で全面的に葺き替えることで耐火耐震補強とした。内部は博物館としての展示によって大幅に手を加えられているが、レンガ造の連続ヴォールト天井は後から塗られた漆喰を剥がして旧に復し、また、シンボルとしての煙突もピンニングによって補強されている。 2004年には、敷地内工場群の郊外移転と跡地開発を契機に、景観保全のための空地を確保しつつ周囲に集客施設を整備するという全体計画を立案し、本施設を中心にした豊かな緑と新たな賑わいを創出することで、まちづくりへの貢献を図ることとした。 工場群の移転に際し、無造作に置かれた付属倉庫類も撤去、建屋の四周が開放されて見えるようにした上で、改めて後背部のレンガ外壁周りを修復し、同時にバックスペースを収める増築部においても意匠と素材感の継承に留意している。また、ステンドグラスや鋳鉄製螺旋階段など往時を物語るアートワークも保存・展示の継続が期待されている。 設備・維持管理に関しては、既存のレンガ壁とヴォールト天井を残すだけの大規模な構造補強を行った1986年〜1987年の改修時に、灯油炊き蒸気ボイラー、空冷チラー冷凍機などを設置し、空気調和設備が整備された。同時に給排水は高層水槽式から水道直結式に変更された。2004年〜2006年の改修では融雪用の電気(6.6kV)と非常用自家発電機80kWが増設され、今後も長期修繕計画に基づいて計画的な設備補修、更新が予定されている。建物のライトアップにはソーラータイマーを設置し、また空調のスケジュール運転は設備員による間欠運転を行うなど、省エネルギー対策に努めている。 保存と開発のマスタープランを定めて、隣接するショッピングセンターの建設においても本施設の軸線を用いて街並みとして壁面線を調整し、外部空間と景観の一体的整備を図ったこと、更には外構の整備、清掃もたいへん行き届いていることなどが四季を通じた地域の魅力作りに効を奏して、札幌の代表的観光施設として親しまれている。 |
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