1979年、商船三井ビル(虎ノ門ダイビル)は、同一敷地にある虎ノ門三井ビルとともに総合設計制度により計画された。完成後、建物所有者、管理会社が数度にわたって変わった後の2005年以降の現体制のもとで、この建物が次の30年を目指して時代に合った「先進的でステータスのある商船三井グループの本社ビル」であり続けることを目標に改修することが決定され、建物所有者と使用者が協働して居ながら改修として行った。
改修計画は、ビルの基本性能(安全、機能、デザイン、内装、外構)について精査し、現在の先進的新築オフィスビルをベンチマークに、アップデートする考えで検討された。本社ビルとしてのステータスづくり、執務環境の向上、現行の構造設計基準に準じた構造の再解析による安全性の再確認、設備諸元の再検討などを行っている。
エントランスホールは、船会社の本社ビルのイメージを表現するインテリアに一新し、基準階事務室は全面的にOAフロアーを敷設、天井高を2,700にアップして外装カーテンウォールの全面改修と合わせて明るく開放的な執務環境を実現した。外装カーテンウォールは、スパンドレル部分のバックパネルの1/2を外して窓化する改修を行い、室内からの開放感を向上させ、ビジョン部の広がりと窓付近の折上げ天井部分に設置した照明効果により、昼と夜の外観イメージを一新させた。また、アメニティ向上のため、社員食堂を中心とした厚生ゾーンの全面的な見直し、明快な分煙化と喫煙環境改善策としての喫煙室新設、トイレの男女比率の見直しによる個数の改善と美装化、サインの全面見直しなどきめ細かい対応を行っていた。VIPの接客の中心となる役員ゾーンについても、世界からのお客様を迎えるに相応しい応接ゾーンの充実と役員執務室のインテリア及び設備を新築同様に改修していた。
主要構造部の安全性については、新告示による再解析を行って確認し、地震時の繰り返し荷重による強度低下が懸念される耐震ブレースを炭素繊維巻補強して万全を期していた。
設備面においては、今後30年間の使用を前提とした基幹設備の更新、サービス性能の向上を目的とした改修により、先進的な新築ビル水準まで機能を高めるとともに、環境対策、省エネルギーを重視した機能改善が実施されていた。環境面での主な改善改修として、照明器具の高効率化と自動調光、自動点滅による省エネ化、灯油を使用した熱源システムからクリーンな電気+ガスシステムへの更新、空調システムにおける変流量、変風量方式による搬送動力の低減、節水型衛生器具の採用、BEMSの導入などが実施され、改修前と比較して設備容量増による機能アップにも関わらず、17.4%のエネルギー消費量削減が実現されていた。
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