第17回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰物件 |
Lattice shibaura (ラティス芝浦) |
所在地:東京都港区芝浦4-12-35 |
竣工年:1986年 |
改修年:2006年 |
用 途:(改修後)共同住宅・SOHO |
建物所有者:日本土地建物 |
改修設計者:樺|中工務店 |
改修施工者:樺|中工務店、日土地建設 |
「ラティス芝浦」は、運河沿いに建つ築19年(1986年築)のオフィスビルを、一棟貸しのテナント退去を機に全60戸の賃貸住宅・SOHOへとコンバージョンしたものである。建設地の芝浦は、近年ファミリー向けのタワーマンションが多く建築され、かっての倉庫街から都心型住宅街へと変貌しつつあるが、ラティス芝浦の計画には、運河を臨むロケーションや都心型住宅街のポテンシャルを読み解くと同時に、ユーザーの創造性を引き出すライフスタイルの提案等、様々なアイデアに満ちている。 既存建物の6.5×7.5mグリッドのスパン構成や、3.8m(又は3.9m)の階高等については、オフィスビルのスケルトンをそのまま手際よく活かし、賃貸住宅に変換した様々な工夫に違和感は全く無い。また既存内装解体後確認された精度の高い躯体施工は、改修設計者のデザインイメージ“BOLD&BARE/骨太&荒削り”を生み出す契機になっているのか、改修に際し手を加えることを最小限に抑えている。 外装は廃材抑制の配慮もあって、既存の磁器タイルの上に塗装を施したものだが、薄い塗膜のみで全く新しいイメージの建築に変換している。磁器タイルへの塗装は大変難しいため、このように大規模に採用されたなケースは少ないのではないだろうか。この塗装技術は、今後外装にタイルを採用した様々な建築の、色彩のみのリニューアルも可能にする技術と思われる。 内装は、住宅建築としての新たな間仕切り以外は、既存の仕上げ材をむしろ剥ぎ取ったといえるもので、直天井の採用や設備配管の露出処理等により、広々とした心地よい空間を生み出している。 設備・維持管理に関しては、オフィスビルからのコンバージョンに際し、3.8mという階高を最大限に利用して配管や配線を天井から露出させ、改修後の賃貸住宅・SOHOの空間デザインの要素として活かしている。オール電化の採用によるCO2排出量の削減、24時間換気、バルコニーによる日射遮蔽など環境保全にも配慮し、環境性能評価の指標であるCASBEEのBEE値をBランクからAランク(BEE値1.5)に向上させている。運営面では、昼間常駐の管理人により設備関係のチェックと共用部の床清掃とゴミ収集を毎日実施している。さらに長期修繕計画を立案のうえ、内外装の改修、空調、給排水、電気、昇降機、防災設備などのメンテナンスを計画的に行うことにより、施設の性能維持を目指している。 建物の寿命は、耐久性を考慮した設計、施工、維持管理等の技術に依存する物理的な耐用年数とは別に、建設地の環境がつくる土地の価値を含めた、不動産価値としての評価から決まる場合が多い。古い価値から新しい価値への転換でその寿命を延ばす、「ラティス芝浦」の築19年でのコンバージョンは、まさにこのケースに該当する、リニューアルの優良なモデルとなりうる。 |
第17回BELCA賞に戻る |
BELCA賞トップに戻る |