第17回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰物件 |
養命酒健康の森 記念館 |
所在地:長野県駒ヶ根市赤穂16410 |
竣工年:1930年 |
改修年:2005年(2002年移築) |
用 途:(改修後)記念館・販売所 |
建物所有者:養命酒製造㈱ |
改修設計者:㈱竹中工務店 |
改修施工者:㈱竹中工務店 北野建設㈱ |
養命酒健康の森 記念館は、養命酒製造の創業地である長野県中川村に1930年(昭和5年)築造された酒蔵の一つをリフォームしたものだが、この酒蔵は、製造拠点の移転に伴い、1961年(昭和36年)と、2003年(平成14年)の二度にわたる移築を経て、現在「養命酒」を生産する長野県駒ヶ根にある。移築後は製品倉庫として利用されていたが、2005年(平成17年)工場見学者に開放する記念館にリフォームされた。 酒蔵から記念館へのリフォームは、移築時の伝統的工法で忠実に再現された漆喰壁、なまこ壁、屋根瓦等の外装はもとより、当初からの骨太な木造軸組みには極力手を加えず保存し、記念館として必要な、内部空間に設置する新たな展示装置や仕上材を、ガラスやステンレスによる現代的な素材で構成している。この新・旧の領域を明確にした対照的な組み合わせによる、歴史性を意識し強化したリフォームは、伝統的な建築のリフォームに対する効果的な一手法になる。 また酒蔵脇に併設された増築棟は、徹底して現代の建築技術でつくられており、これも伝統的な酒蔵建築との新・旧の対比を意図的に強化し計画されている。この新・旧二つの建築の併設は、薬酒メーカー「養命酒」の400年を超える歴史の継承であると同時に、訪問者に対する「時」そのものの巧みな演出であるようにも見える。 設備計画は、移築棟の小屋組みに代表される酒蔵の歴史に配慮し、“見せない”設備をコンセプトとしている。また省エネルギーのため、人が滞留する部分を重点的に空調するよう工夫されている。具体的には、造作ベンチ内に空冷ヒートポンプエアコンを、床の嵩上げ部分400mmの中に、全熱交換機、ダクト、電気配線を収納している。日常点検と維持保全のため、ベンチは取り外し可能な構造とし、嵩上げ床には点検口が要所に配置されている。またエアコンが床にあることにより暖気が天井に上昇する問題点は小屋裏にサーキュレータを設ける事により解決を図っている。 創業(1602年)時のイメージを残しながらも、深い森の中に埋没していた素朴な製品倉庫が、創業以来の薬酒文化を継承する記念館(展示館)に生まれ変わった。地域の人々に公開されることで新たな生命が吹き込まれ、工場の一施設としての枠を超えた、地域文化の一拠点として根付くことを期待したい。 |
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