17回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰物件

宮城球場

所在地:仙台市宮城野区宮城野2-422-2

竣工年:1950

改修年:2006

用 途:(改修後)観覧場(プロ野球場)
       (改修前)観覧場(野球場)

建物所有者:宮城県

改修設計者:KAJIMA DESIGN

改修施工者:鹿島建設 

 プロ野球「楽天イーグルス」のホームグラウンドである宮城球場は、築50年に及ぶ既存の県営球場を改修し、プロ野球を楽しむことをコンセプトに新しい野球場の概念を持ち込んだ施設である。

 突然のホームチーム移転に対応すべく、改修は2回のシーズンオフを利用して行われたが、その中で観客が「近くで」「自由に」「贅沢に」ゲームを観戦できるよう、さまざまな工夫が凝らされている。たとえば観客席をフィールド側に拡張し、周囲の公園を球場内に取り込み、多様な観客席でフィールドを取り囲む。こうした手法はすでにアメリカの球場では例が見られるが、日本ではこのスタジアムがほとんど初めての例であり、「ボールパーク」という概念にふさわしい新しい球場の誕生が、チームのイメージアップにもつながっている。

 建築的には、耐震診断の済んでいる既存躯体にはあまり手をつけず、正面に施設の新しい顔となる増築部を設けることで、新しく要求される機能に対応している。 

設備的には、プロ野球球団のフランチャイズ球場の要求に応えるため、電気設備を中心に大幅な増強がなされている。ナイター照明、バックスクリーン大型映像装置、売店電源、TV中継車電源など旧宮城球場時代に比べ1,500kW以上の増となっている。超短期の工事のため照明塔は既存利用となっているが、照明塔の塔高の低さを補うため、外野照明塔2基の最上段投光器を上向きにするなどの工夫もなされている。その他、音響設備、放送用通信設備、非常電源、空調設備、消火設備なども増設や増強が行われ、滑y天野球団による維持管理とともに、プロ野球開催にふさわしい舞台を提供している。

「砂被り席」「張り出し席」「テーブル席」などゲームをさまざまな形で楽しむための仕掛けは成功しているように思われる。年間指定席は通常同じ席で一年間観戦できる権利を買うものだが、ここでは一年を通じてさまざま席でゲームを体験できる年間チケットも好評を博しているとのことである。一度この球場でゲームを体験してみたいと思わせる、楽しみの予感を感じさせる優れた改修例だと言える。

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