第17回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰物件 |
国際文化会館本館 |
所在地:東京都港区六本木5-11-16 |
竣工年:1955年 |
改修年:2006年 |
用 途:会館(集会場、宿泊室、図書室、研究個室)(改修前後とも) |
建物所有者:(財)国際文化会館 |
改修設計者:且O菱地所設計 阪田 誠造 小林 正美 今川 憲英 |
改修施工者:清水建設 |
日本を代表する3人の建築家(前川國男、吉村順三、坂倉準三)の共同設計による、1955年竣工のモダニズム建築の保存再生事業。かなり以前より、会館の老朽化・稼働率の低下、及び、周辺都市開発とのからみから全面建替が検討されていた。しかし、各方面からの保存要請があり、特に建築学会の当会館保存再生計画特別調査委員会の報告書が2004年8月に出たことが契機となり、保存再生に方針転換がなされ、1年の工事期間を経て2006年4月に再オープンした。「保存のための再生でなく、再生のための保存」を基本コンセプトにかかげ、既存の何を残し保存するかを慎重に検討し、内外装ともに周到に設計計画、施工計画を検討のうえ実施されたものである。 特に、将来計画を見越して新設された200人収容のホールは、地下への増築と言う難易度の高い条件であったが、アンダーピニング工法で精度高く実現し、既存の豊かな外部庭園と有機的に繋がった空間を作り出し、従来の建物の格調を損なうことなく新たな魅力を付加している。ホテル客室部分は、現代のホテル機能を満たすべく、片廊下として面積を大きくし、ユニットバス(UB)を設置した。この為、床レベルを全体に上げたが、結果として客室とUB、窓下枠が同レベルとなり、バリアフリー化も併せて実現出来た。外装は、既存木造(檜)サッシに着色アルミ枠を追加させて複層ガラスを取り付け、既存の外観イメージを継承させるとともに、強度アップを利用して、横桟を取るという効果も挙げている。 当改修が成功したポイントとして、設備諸室を、建物前面空地の車廻しの地下に新設し、既存部分の外観を変えることなく、また基本的な設備機能を既存部分と関連なく一新出来た事が挙げられる。これによりバック通路が整備でき、エネルギー供給、飲食等のサービス、メンテナンス面のすべての問題が解決された。空調・衛生・電気・防災設備はほぼ一新され、今後50年間、本館のみで自立できる仕様となっている。また空調負荷の低減、熱源の個別化、省エネルギーシステムの採用、給水方式の変更、給湯方式の個別化等の環境面への改善も行なわれている。半地下を利用して、将来の搬出入ルートも確保されており、維持保全の配慮もなされている。 出来上がってみれば、何処を直したのかと問われるくらい、しっくりと落ち着いており、周辺環境との調和も以前と同様に保たれている。運営・収益面でも改善されて事業として成功しており、今後の近代建築の保存再生のモデルとなり得るものである。 |
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