マルヤガーデンズは1960年代に地場のデパートとして建築され、その後25年間営業してきた三越の撤退に伴い、再度地場の商業テナントビルとして一新された商業施設である。
地方都市の中心部は商業施設を中心に賑わいが保たれてきているが、郊外型大型ショッピングセンターの進出などにより経営が困難になり、人の集う商業ゾーンとしての賑わいが衰退してゆくという共通の問題を有している。
この問題に対し、オーナーである滑ロ屋本社は三越の撤退を機に、単純な営業利益ではなく隣接する天文館商業ゾーンと合わせた中心市街地の活性化を改修のコンセプトとし、都市中心部の利便性、地域社会の象徴としての場を活かした地域コミュニティーのための交流の場・ガーデンを新たな商業テナントビルの顔つくりとしている。各階に設けられたガーデンではコミュニティーの自主的活動としてアート展示、料理教室、ワークショップなど様々なイベントが企画され、単なる買い物の場ではなく、市民にとって親しみのある参加型の活動的商業施設に改修されている。
計画では増築が繰り返されてできた多くの避難階段を、避難安全検証法を適用し、階段の幅や数量を整理することで全体の床面積を変えずに有効貸床面積が870u増加されており、こうしたコミュニティースペースに活用されている。
また、時代に適う商業空間としての天井高さを確保するために、空調の冷温水管など天井内設備を天井と同色塗装して露出させ、既存より540mm天井を高くした開放的な空間を実現している。さらに、ガーデンやインフォメーションの内装には鹿児島の木材や、地元の工芸品である薩摩焼タイルを使用し、鹿児島ならではの特徴的な空間とすることで新たな商業ビルとしての建物価値を向上する再生がはかられている。
なお、耐震性については下層階独立柱のRC打ち増しと炭素繊維巻補強など耐震性の向上に有益な改修が行われているものの十分な耐震安全性が確保されているものではなく適切な時期に本格的な耐震補強の実施が望まれる。
環境対策や省エネルギーへの取組みとしては、設備への「ESCO事業」の導入が挙げられる。桜島噴火時の火山灰対応を考慮した設備にするとともに、高効率熱源機器の採用、照明のLED化、トップランナ変圧器への改修、エスカレータ・エレベータのインバータ方式への更新などにより、総エネルギー使用量を改修前の63%まで削減している。
また、維持管理については建築、電気、機械等の専門業者による保全体制が構築され、長期の維持保全計画に基づく、きめ細かな管理を行うこととしている。
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