1966年に竣工した講堂の外観は、周囲を威圧するような異彩を放つ。しかしながら、ここは創建当時より学園の講堂としての利用に留まらず、地域住民に開放され、映画鑑賞の場として親しまれ愛されてきた。
半世紀近く経って改装されたが、われわれの胸を打ったのは、学園のこの建物への愛着である。永い間親しまれて来た建物を、新しい時代に、従前と変わらぬ愛着を持って使い続けてもらうにはどうしたら良いか?その一点に向かって、学園、コンサルタント、建設会社が一体となり、考え抜き実現させた。
柔らかみのある木質調の壁、創建当時から、講堂という空間の緊張感を引き出す為の演出であったに違いない、壁面から半円形に突き出た照明用のバルコニーも、木のルーバーで化粧され、周囲に違和感無く溶け込んでいる。ここでは付属設備である筈のトイレも木のしつらえである。さらに発注者のこだわりは、芝学園の「芝」のイメージを緞帳のデザインに織りこむという手の込みようである。座席もオリジナルの家具だと聞く。
外観は別にして、玄関とそこへのアプローチ、ホワイエなどにも、内部に見られるこだわりと同様のこだわりが見られれば申し分無かったが、それを補って余りある出来栄えである。
空調設備については冷房設備を新設しているが、残響時間をコントロールするため設置した木質壁の内側に空調ダクトを隠し、上下の温度差の少ない空間を実現している。
電気設備としては、高天井の照明器具に高効率ダウンライト、LEDライン照明を導入し省エネ化を図るとともに、照明器具の交換も、手間暇のかかっていた客席側からではなく新たに天井内にキャットウォークを設置し、容易にした。
衛生設備面では、男子校であることから不十分であった女子トイレを大幅に増設、保護者や近隣住民への便宜を図った。節水トイレ、自動水洗、消音装置の設置など大幅な省エネ化を図っている。
また音響映像設備も含め、さまざまな工夫により、大幅な省エネ化を達成し、改修前はCASBEE−Bランクであった建物が改修後はAランクとなった。
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