第20回BELCA賞選考総評 BELCA賞選考委員会委員長 内田祥哉 |
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BELCA賞は、良好な建築ストック、つまり社会の中で生き生きと活用される建築の形成に寄与することを目的に設けられた賞である。賞を二部門に分け、周到な長期計画で、安定した維持保全を継続しているものをロングライフ、活躍にかげりの見えてきた建物を、巧みな改修によって現代社会に蘇生させたものをベストリフォームとし、平成3年から前回まで、計19回、表彰件数は186件を数えている。 ロングライフ部門では、所有者、設計者、施工者、維持管理者の四者を、ベストリフォーム部門では、所有者、改修の設計者、施工者の三者を表彰している。昨今の地球環境問題にともなう建築物の長期利用の気運を背景に、BELCA賞への関心は年々高まりつつあるが、現代社会の中で活躍するためには、ロングライフ部門でも、照明、衛生、空調などの面では抜本的改造工事が必要になっている。他方ベストリフォーム部門でも、建物の歴史的経験を保存する傾向が増しているため、近年は両部門を区別しないで合わせて10件を選考している。その結果、本年はたまたま昨年同様、ロングライフ部門4件、ベストリフォーム部門6件を表彰することになった。 今回表彰されるロングライフ部門は、嘗て電話局として使われていた築80年を超えるウェディング施設、新宿の超高層ビル、報道関係者の中枢施設、大学キャンパス内の90年を超える礼拝堂が選ばれたが、いずれも、新築当時の設計が、将来を見据えた配慮に基づくものであり、またそれが、後の維持管理の中で、有効に生かされていることで、この度の選に残った。 ベストリフォーム部門では、テナントビル風であったものを自社ビル風に改造したものと、新しい都市環境への貢献を目指したオフィスビル、コンクリート打ち放しを創建当時以上の鮮やかさに復元した大学、免震構造への改造を全く目立たせない大型寺院、工場を転用した資料館など、多彩な物件を表彰できることになった。昨年に引き続き、本年も、転用を伴わないものが多く、名実ともに建築寿命を延ばすための維持管理が、社会に定着しつつあることを実感させる。 審査を顧みて、本年の応募案件は、これまでにない優れた物件そろいであったため、選考委員のあいだでは、早くから選考の難しさが予想されていた。残念ながら本年の選考に漏れた作品には、入選案に劣らぬ優秀な維持管理が行われているものもあるので、それらについては再度の応募を期待したい。また、此の分野の技術は、ますます多角的に展開されているので、応募作品の水準も、年ごとに高まることが予想されている。 BELCA賞も回を重ね、周知の範囲が広まってきた。今回新たに、富山県からの応募があったが、建物の維持保全技術の全国的普及向上を目指す賞の趣旨から、未入選の地域からの応募を切に期待したい。
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