@寿命に関する意識の傾向分析結果
「賃貸事務所ビルの寿命に関する意識調査」のうち、回答者の意識についての設問である、(@)建物の寿命への影響度合いの大きい項目及び(A)長寿命化に関する意見について主成分分析を行った。
(@)については、回答者の属性別にみると設計者や維持管理者は平均して長寿命化に対する意識が高いことが分かった。また、勤続年数による意識の違いは大きくなく、FM担当者や構造設計者の意識が高いとは限らないが、関係した建物の数が多いほど意識が高いということがわかった。
(A)については、総じて強い相関関係はないという結果となった。
さらに、(@)の第1主成分(長寿命化に肯定的)と(A)の第1主成分(長寿命化に否定的)を二次元にプロットしてみたところ、比例関係がみられてもおかしくないはずだが、ばらばらの分布となり、回答者の中でも明確なイメージができておらず、充分に浸透していないことが推察された。
A長寿命化に関する文献リスト
日本建築学会の論文のうち、表題に「建築」と、「長寿命」、「LCC(ライフサイクルコスト)」、「更新」、「耐久性」、「耐用年数(耐用年限、耐用期間、耐用寿命)」のいずれかを含む、174件の文献を調査し、長寿命化に関する研究分野を、A.材料・工法開発、B.建物の実態把握、C.更新、保全、D.経済性評価、E.利害関係者、F.廃棄物、CO2 削減、G.法規制の7つに類型化するとともに、論文の目的を1.実態把握、2.ツールの提案、3.既存手法の比較、として分類した。
その結果、ソフトの研究が少なく、A.材料・工法開発に関する研究が最も多いことが分かった。さらに、目的別の類型化の結果、長寿命に関する論文においては、実態把握を目的とする論文が多数であり、それを受けてツールの提案、手法の比較への研究が発展していくことが示された。しかし、D.経済性評価においては、ツールの提案、手法の比較を目的とする研究が多く、LCC
の算定式が未だに確立していないことよるもので、多くの算定式が現在も提案されているということが要因に挙げられる。また、E. 利害関係者においては、実態把握を目的とする研究のみで構成されており、長寿命化における利害関係者に対するツールの提案がなされていないことが示された。
B築100年RC 造建築物の事例リスト(
海外・国内)
日本建築学会の文献やインターネットにより、1926年(大正15年)以降に建設されたRC造建築物のうち、現存していると思われる海外36件、国内226件の建物のリストを作成した。その結果、海外は20件、国内は13件の築100年のRC 造建築物が現存している可能性があることがわかった。
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