第11回BELCA賞ロングライフ部門表彰物件

沖縄ハーバービューホテル

 1972年(昭和47年)の本土復帰を記念して、1975年(昭和50年)に開催された沖縄国際海洋博覧会を契機に建設され、20数年にわたって沖縄県を代表する地域社会に欠かせないホテルとして、適切な維持保全が実施され良好な空間が維持されていることを評価する。
 このホテルは、復帰直後の建設ラッシュと建設資材の流通の混乱、さらにオイルショックに見舞われ建設資材確保が困難という社会状況の下で建設された。
 とりわけ問題であったことは、地域が持つやむを得ない状況である、細骨材としての海砂使用である。塩分管理のために工事管理を徹底し、砂の洗浄を行い使用され、1998年の劣化調査においても著しい中性化の進行は認められず、現状も健全な状態が保たれていると報告されている。
 またインフラが未整備の中の建設であったため、電力の確保、給水量確保と水質の管理など、本土内では考えられない問題を抱えながら2年の工期をもって完成している。
建設当時のデザインコンセプトは度々の改装にもかかわらず慎重に継承されている。
特に沖縄の「土」を表現した外壁のオーカーレッド色は竣工当時には異質な存在であったと聞くが、現在では伝統の赤瓦や茶系の土壁の色として、地域をリードするカラーとなっている。
 維持保全のための改修は適宜実施されている。特筆すべきは、都市のインフラ整備への同調と省エネルギー対策の実施である。当初使用されていた上水受水槽を氷蓄熱層に転換した氷蓄熱システムの採用、電力供給状態の安定による受変電設備の全面改修、自動制御機能向上のための中央監視盤の取り替えは宿泊客の冷暖房に対する要望に細かく対応することが可能であるとともに省エネルギーに貢献している。
 所有者は今後さらなるハード・ソフト面の充実のための改装計画を立案しており、随時実施予定である。今後も地域社会に欠くことのできない施設として、良好な状態の維持保全が期待される。
 98年外壁改修時に採用された光沢のある外壁は、当初の沖縄の風土を表現しようとした沖縄の「土」のイメージとの差異を惜しむ声が審査時にあったことを申し添えておく。

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