第19回BELCA賞ロングライフ部門表彰物件 | |
住友スリーエム本社ビル |
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所在地 | 東京都世田谷区玉川台2丁目33番1号 |
竣工年(改修年) | 1974年(昭和49年) |
建物用途 | 事務所 |
建物所有者 | 住友スリーエム株式会社 |
設計者 | 株式会社 日建設計 |
施工者 | 株式会社 大林組 高砂熱学工業株式会社 |
i維持管理者 | 住友スリーエム株式会社 株式会社 山武 |
この建物は約35年前の1974年(昭和49年)、まだ田園風景の残る環状8号線沿いに建設され、郊外に建つ先駆的な本社ビル建築として注目された。計画当初から長期にわたる全体計画実現のため明確なオーダーが設定され、そのオーダーに従ってその後の施設の整備拡充が図られている。 平面計画は、中央部に約21mの大スパンの事務室を配し、その左右にコアを配置、コア部分で主要架構を受ける構成としている。柱のない事務室は約21m×41mの広さがあり、オフィスニーズの変化に柔軟に対応することを可能とし、オフィスとしての陳腐化からこの建物を救っている。また、コア部分は主要動線やサービス諸室、会議室、個室対応のスペースとして利用され、この建物の使い易さを補完している。 外観の特徴は、東西コア部分の半割煉瓦仕上げの壁と南北のコールテン鋼カーテンウォールである。設計者は、年月とともに落ち着きと深みを増す材料として選択しており、長期計画を見据えた長寿命建築に相応しい思慮によっている。東西のコア部の外壁は開口部を限定し、西側幹線道路からの騒音を遮断するとともに、西日を遮ることで日射による冷房負荷の低減を図り、安定した光環境をオフィスに提供している。南北のカーテンウォール部の開口は、横一面に広がる大きな、気持ちの良い眺望を楽しめる。また、敷地周囲は緑地を整備して公開空地として提供するなど周辺環境との調和に努め、時代の変化に十分耐えられる計画がされている。 構造計画の特徴は、鉄骨コンクリート造の東西のコア部を地下のベルトトラスと最上部のハットトラスで繋ぎ「ロの字型」架構を構成して剛性を確保し、鉄骨梁の21m大スパンオフィスを実現したことにある。この「ロの字型」の架構が、南北の門型の表現となり、この建物のデザインを形づくっている。 1992年(平成4年)、本館南側に新館の増築時には本館のダブルコアを踏襲し、外観もレンガタイル貼りとするなど基本オーダーに従った調和が図られている。本館・新館の間はガラスボックスで一体的につなぎ、社員の憩いの場として活用されている。ガラスボックスのカーテンウォールも美しいオブジェのようにデザインされ、魅力的な空間を提供している。 建設以来約35年、建物の運用管理は自社の運用管理部門が一貫して統括し、建物の品質確保や安全・安心で快適な執務環境の提供に努力している。食堂やエレベーターホールなどは、竣工以来行き届いた手入れの中で補修することなく使い続けており、自社建物を大切に使う社員の愛着の深さも感じられる。 設備については、機器の更改に加え、空調方式の適正化や不要時消灯活動など、自社で行う運用組織の利点を活かしたきめ細かな取り組みの積み重ねで、省エネルギーの成果を上げている。数値目標を設定し実績管理を確実に行っている姿勢も評価された。 |
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