18回BELCA賞ロングライフ部門表彰物件

東京カテドラル聖マリア大聖堂
所在地 東京都文京区関口3丁目16番15号
竣工年(改修年) 1964年(昭和39年)、(1985,1997,2004,2007年改修)
建物用途 教会堂・礼拝堂
建物所有者 宗教法人 カトリック東京大司教区
設計者 樺O下都市建築設計
大成建設活鼡煙囃z士事務所(改修)
施工者 大成建設
i維持管理者 宗教法人 カトリック東京大司教区
 数ある丹下建築の中でも屋内総合競技場と並んで最高傑作とも評される建築である。
1964年の竣工以来、これまで幾度も維持保全工事が重ねられてきており、竣工21年、33年目に続き43年目の大規模改修として実施された今回(2007年)の工事ではオリジナルデザインを踏襲しつつ、これまで抱えてきた悩ましい問題点を抜本的に解決するものとして実施された。
 HP(双曲放物線)シェルのコンクリート劣化は内外部共徐々にではあるが進行しており、内壁でもわずかながらエフロレッセンスが生じていた。また、竣工以来ほとんどノーメンテナンスだった外装ステンレスには腐食や捲れが生じ、下地鉄骨にも発錆が生じていた。今回の外装改修は、RC躯体の防水対策を充分に施した上でステンレス板を全面貼替えるという、万全を期したものであった。下地のRC躯体と逆梁形状の縦横格子梁を、水勾配の整形補正をした上で全体に塗膜防水を施した後、新たに溶融亜鉛メッキの軽量鉄骨下地を流し、木毛セメント板+ゴムアスルーフィングシートを貼っている。仕上げのステンレス板は熱膨張係数が低く耐候性の高いフェライト系ステンレスに変え、谷部の板を固定後山部化粧カバーをはめ込んでゆく瓦棒葺きの納まりとしている。山部の長尺カバーは最長38mもあり、クレーンで吊り上げる際座屈しないように専用の格納治具を製作しボックストラスに固定するなど施工上の工夫がなされている。
 トップライトについては1985年、1997年の2回にわたり応急処置的対応として折板屋根を被せて機能維持してきたが、今回折板を撤去し雨は全て外に落とすシールによらない納まりのアルミトップライトを新設している。この改修により大聖堂内部にそそぎ込む大十字の荘厳な光が竣工当時のままに蘇った。大聖堂内部の照明については電球切れ毎に足場を組まなければ交換できなかったトップライトの照明を昇降式の大型のものに換え、夜間の明るさを確保した。近い将来にはLED照明を採用し、照度分散型への改修を見込んでいる。また、地下聖堂へのアプローチが身障者対応となっていないため、電動昇降設備を新設してのバリアフリー化も計画されている。さらに、大聖堂と同時期に竣工した鐘楼の改修や低層棟屋上の防水更新なども今後実施してゆく計画となっている。竣工以来使用し続けてきた受変電設備はカトリックセンター改修や献堂50周年に向け計画されている構内再構築整備、将来の空調増強に備えて今回全面更新している。
今回の外装を中心とした大規模改修は極めて難易度が高い工事を伴ったが、竣工時のオリジナルデザインを堅持しつつ品質的に今後永年にわたって不具合を生じさせないという要求に充分応えられるものとなっている。この建物は建築主をはじめとする多くのカトリック信者の方々より寄せられた深い愛情と理解、永続性への願いに支えられており、安定した維持管理、運用がこれまでと同様に丁寧に行われてゆくことが期待できる。ロングライフ部門の優れた建物として表彰に値するものである。 
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