第16回BELCA賞ロングライフ部門表彰物件
臨南寺本堂
所在地:大阪市東住吉区長居公園1-32
竣工年:1974年
用途:寺院(本堂)
所有者:宗教法人 臨南寺
設計者:大成建設活鼡煙囃z士事務所
施工者:大成建設
維持管理者:宗教法人 臨南寺
曹洞宗臨南寺は全国的にも珍しく公園(長居公園)の中に位置している360年近い禅宗の寺であり、戦前までは隣接するJRの駅名も臨南寺駅であったとの事。今回対象受賞対象となった本堂は旧本堂の老朽化に伴い昭和49年に、伝統的な仏教空間を現代の材料と技術で創るとのコンセプトのもと再建された。
建設当時には、とてもお寺の本堂とは思われないデザインに檀家からの反発もあったように伺ったが、それをも跳ね返した建物の中に入ってみると、厳粛な雰囲気があり、空調の吹出し口も天井モジュールの中に組み込まれており、全く空調設備の存在を感じさせない。したがって寿命の短い設備の更新に当たっても人目に付かない機械室内の工事で済む配置になっている。
建物の主な素材は鉄骨とプレキャストコンクリートと銅。主要構造は鉄骨造で、内陣を囲む中柱が屋根を支え全体の水平力も負担している。外周の柱は直上の荷重の支持のみで、意匠的に外周壁の一部と天井に近い部分でガラスが使われているが、大部分がこのプレキャストコンクリートの列柱となっており、明るい割りに熱負荷環境は悪くない。できれば本堂の性格上ではあろうが外部に対して直接外気に開放される入り口部分があるので、風除室を設けるか床暖房を設けてあればより省エネで快適な環境を維持できると思われる。
耐震的にも診断の結果Is=0.61を確保している。天井には銅製硫化処理パネル、床には禅宗様式のならいに準じ敷瓦を四半敷に敷き詰めている。
耐久性や耐候性を考慮した材料の選定と単純化された仏教空間の創造という設計意図が相俟ってメンテナンスが少なく手のかからない建物となっており、本堂の日常の維持管理は寺院関係者が担当されているが、モップがけ雑巾がけと照明器具の電球交換や空調機のフィルター清掃を必要時に行うだけで非常に維持し易いとの事であった。
寺院の本堂に現代的で独創的なデザインを採用し、その本堂を地域住民にも広く開放しながら維持管理をしている所有者の姿勢も含めロングライフ部門の優秀な物件と評価できる。