第16回BELCA賞ロングライフ部門表彰物件
神戸女学院 校舎棟
(音楽館、講堂・総務館、図書館、理学館、文学館) 写真は音楽館
所在地:兵庫県西宮市岡田山4-1
竣工年:1933年
用途:大学校舎棟
所有者:学校法人 神戸女学院
設計者:活齬ア社ヴォーリズ建築事務所
施工者:樺|中工務店
維持管理者:学校法人 神戸女学院
今回受賞した建物は神戸女学院が1933年に神戸から西宮市岡田山の丘陵の現在地に移転した際ウィリアム・メレル・ヴォーリズの設計、竹中工務店の施工により建てられた音楽館、講堂・総務館、図書館、理学館、文学館の校舎棟である。各棟は「スパニッシュ・ミッション・スタイル」と呼ばれる南地中海に見られる様式を基調にし、構造は耐震壁付のRCラーメン構造である。
1995年阪神・淡路大震災時に、他には構造的に大きな損傷は無かったものの、文学館の木造屋根トラスが倒壊し、鉄骨トラスに修復している。
2005年より文学館、理学館の中廊下の一部木軸壁をRC耐震壁に変える補強を行っているが、廊下側の既設の壁仕上げを残し教室側から施工する配慮により内部空間の雰囲気を維持している。外装の改修についてもスクラッチタイル、リソイド壁、S型瓦等、常に建設当初の風合いを保つ努力が重ねられている。
建物群全体における暖房施設は、油炊き蒸気ボイラーを熱源とした古いラジエターを使い続けており、冷房はガス冷温水発生器や電気式チラーを熱源とし、室内露出のファンコイルユニットを中心に設備されている。ラジエターは使える施設は使い続けるといった思想の中で、講堂やチャペルの雰囲気によくマッチしている。露出の配管やファンコイルユニットは一見不似合いであるが、本建物群に共通しているし自然体の流れ(贅沢過ぎないという観点)から見ると、無理に隠そうとはせず、その時代に必要なものを要求に応じて最小限の設備をしていると考えることができるようになり、実は不似合いではないことを感じさせられる。
普段より学生の上履きシューズの奨励、傘立て、傘袋の設置等所有者である神戸女学院の教育理念実践の場、理想のキャンパスとして今後とも守り続けるとの意思表明のもと、73年前と基本的に同じメンバーが中心となって維持保全され、変らずに日々使用されていることは高い評価に値する。