第14回BELCA賞ロングライフ部門表彰物件
学校法人 星薬科大学 本館
所在地 東京都品川区荏原2-4-41
竣 工 1924年
用 途 講堂、教室、事務室、理事長・学長室、開架書庫
所有者 学校法人 星薬科大学
設計者 (株)レーモンド設計事務所
施工者 清水建設(株)
維持管理者 学校法人 星薬科大学
星薬科大学創立者である星一氏がアメリカ留学で学んだコロンビア大学のローホールを模して創られたといわれる本館である。設計はアントニン・レーモンドで、帝国ホテルの設計を終えたのち、フランク・ロイド・ライトから独立して最初に設計した建物である。1924年(大正13年)竣工時は、屋内プールを持つ、アメリカンスタイルの趣を持つ商科学校の校舎であった。
第二次大戦後はアメリカGHQの施設として一時活用されていた。星薬科大学に返されて以降、今日にいたるまで再三にわたる改修を経て、80年近くが過ぎている。耐震補強を主目的に100年持つ建物への延命を命題とし、改修計画が実施されている。
時代のニーズに応じて、主に設備の更新の際に生じた各種配管や、屋外機など外観に大きく影響を与える要素を今回改修で排除し、建物が汚れにくくなるディテールの改良(水切り金物など)を行い、創立当時の面影の復元を計っている。
建物が持つ平面の特徴を活かしつつ、耐震壁をメインホールの四隅廊下、水廻りなどに配し、外壁に設けず、原設計の外観を確保しながら、耐震補強が行われている。
設備的な改修計画には、見え掛りに十分配慮し、しかも環境・機能の改善を図った意図はよく読み取れる。特にメインホールは、建設当時、余り配慮されていなかった音響・照明・空調の質を高め、意匠的にディテールにこだわった末端処理をしており、古典的な美しさを再現したものと評価できる。
また、屋上に設置された、機器類・盤類も、外観に大きな影響を与えないよう、高さを揃え、配置に工夫を加えており、メンテナンスの容易性も確保されている。
ただ、今回の改修計画に含まれていない空調用配管・電気の動力用配線が、無思慮に、外壁露出設置されているのは、大変残念である。維持・保全についても、一工夫必要であろう。極めて、限られたコストで必要な機能を盛り込んでの努力は十分窺える。
また、古き中にも現代的な快適性を確保するために明るく安らぎのある便所では、花台のあるアイランド型洗面台を設け、清潔でやわらかな空間づくりもされている。