第13回BELCA賞ロングライフ部門表彰物件

MOA美術館




所在地:静岡県熱海市桃山町26−2
用 途:美術館
竣 工:1981年(昭和56年)
所有者:宗教法人 世界救世教
設計者:樺|中工務店
      鹿島建設
施工者:樺|中工務店
      鹿島建設
維持管理者:宗教法人 世界救世教

 竣工の時には、通常では考えられない傾斜地に実現した壮大な構想の美術館とエスカレーターを大量に駆使して来訪者を山上に導くという思い切った発想で世間の話題となった美術館である。
 竣工後 20年余の年月が経過した現在では、当初の印象から変化して、環境に良く調和した佇まいを見せている。
 特に、美術館への参道と位置づけられている長大なエスカレーター導線を通すためにオープンカットされた崖地は、今では見事に緑に覆われ、外から一寸見ただけでは、そこが、かってはオープンカットの後も痛々しい場所であった事など伺い知れないようになっている。したがって、美術館は忽然と崖の上に聳え、外装のインド砂岩の色が周辺の緑と良く調和して 不思議な世界を創出している。
 美術館展示室の内部については、永続性に配慮した材料の選択と誠実なメンテナンスの故か、20年経過した今も全く破綻を見せていないのは、評価すべきである。
 1999年には2000年問題を契機に中央監視設備を更新し、同時に広大な敷地全体の情報通信用の光ファイバーネットワークを高速、大容量なものに更新するなど、全体の建物群の管理を能率的に行えるように常に怠らず努力を続けている点や、熱源のリニューアル時に氷蓄熱設備を採用するなど省エネルギーへの前向きな取り組みを行っている事も評価される点である。
 館内のメンテナンス体制については、長期の維持保全計画に基づいて、ほぼ完璧な維持保全がMOAグループの専従職員によって行われているが、特筆すべきは「アート・ボランティア」制度が、所有者である宗教法人の信者によって組織されており、年間 延べ4,500人の参加により館内案内や館内清掃にあたっている点であり、信者全体の愛情によりこの美術館が支えられている点が、美術鑑賞のためこの建物を訪問する者に実感として感じられる。