第11回BELCA賞ロングライフ部門表彰物件

ひろしま美術館

 この建物は、広島銀行の記念行事「創業100周年」として1978年(昭和53年)4月に竣工したもので、モネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホなどフランス絵画の名作をはじめ、内外の近代絵画や彫刻などく百数十点を常設展示する美術館である。
 敷地は、広島市の中心部の緑豊かな中央公園内に位置している。都会の喧噪から隔離し、かつ公園の中になじませる配置とするため、中庭の中央に円形平面の本館を置き、周囲に回廊をめぐらす配置としている。
 本館中央部は明るいドームで覆い、自然光が利用されている。そこから4つの展示室へ自由に出入りできる平面計画となっている。また展示室の一部や講堂などの諸室は地下に配置されている。
 本館は、銅版葺きの屋根にローマン・トラバーチンの外壁とし、「時と共に美しさを増す」ことを意図して設計されたが、現在設計意図どおりに、緑青の屋根と白い壁が美しく鮮明な対比を見せているのは印象的である。
 建物の維持管理については、設計思想を尊重し、維持保全計画に基づいて継続実施されている。竣工後10年の経過後からは毎年の点検・補修を実施するとともに、竣工後20年の経過時点(平成10年〜平成11年)には、建物全館にわたる改修工事(本館の外壁および屋根の改修工事並びに回廊の内外壁、天井、屋根などの防水工事など)を実施し、あわせて空調機器1機・温湿度制御装置ほかを更改している。
 新築時に明確に意図された建物の長寿命化については設計・施工が一体となっての種々の工夫がなされたが、現在においても大きな改修を必要としないことからも当初の計画通りの成果が得られていると言えよう。
 設備的にも、自然光を採り入れた地上部分の展示室、地下の安定した温湿度を利用した地下展示室ほかの諸室、廃熱回収型のヒートポンプユニットの導入など省エネルギーの諸施策は成功していると言えよう。
 竣工以来23年の歳月を感じさせない、竣工当時の姿そのままの展示空間、歳月を重ねることにより建物と一層の調和をみせる外部空間などは、所有者、維持管理者の普段の努力の賜であり、今後も適切な計画的保全により、100年以上の長寿命を期待できるBELCA賞に相応しい建物であると思われる。

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