第19回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰物件 | |
碧南市藤井達吉(ふじいたつきちきち)現代美術館 |
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所在地 | 愛知県碧南市音羽町1-1 |
竣工 | 1980年(昭和55年) |
改修年 | 2008年(平成20年) |
建物用途 | 美術館(改修後) 商工会議所(改修前) |
建物所有者 | 碧南市 |
改修設計者 | 株式会社 日本設計 |
改修施工者 | 白竹建設株式会社 株式会社 桶元 株式会社 榊原設備工業所 衣浦電気工事株式会社 |
本館は築25年を経過し、役割を終えた旧商工会議所(設計:渇ヘ原設計)を郷土出身の日本の近代工芸の先駆者藤井達吉を顕彰した美術館にコンバージョンしたものであり、市が提唱する「歩いて暮らせるまちづくり」の核となるべく位置付けられた施設である。 建物はかつて信濃へ塩を運ぶルートとして栄えた大浜街道に面し、周囲には各宗派の寺々、神社、九重味醂倉庫などが建ち並び、コールタール塗の壁や板塀が続く歴史的意匠に満ちている。既存の白色タイルに質感を生かす半透明の墨色塗装を施し、遮熱を兼ねたダークな色調の鋼製ルーバー(溶融亜鉛メッキりん酸処理)を設けることで歴史的な街並み景観に融和させている。又、エントランスを妻入りから平入りに変え、大浜街道に面して10mキューブのガラスボックスを増築し、合わせて北側の屋根軒先にもランダムな幅の高さ10mの大判ガラススクリーン(懸垂幕設置可能)を5枚設け、透明性のある意匠的連携をはかっている。これらの原状に付加させてゆく手法により全く新しい施設の顔を創出している。 内部構成では市民が自由に出入り出来る開放ゾーンを全て公道に面して集約させ、大きな開口を通して館内で行われる活動や来館者の動きを外から見えやすくするよう留意されており、街に対する情報発信が有効に行われるようになっている。地階は敷地の勾配をうまく生かしたサンクンガーデンを設け、さらに基礎梁の頭を50p切り飛ばしプレストレス力を用いた補強をするという大胆な方法により天井高を確保するなど居住性を高める工夫がなされている。3室から成る展示室は階高3.8mの制約のなか、エキスパンドメタルのスリットに照明と空調吹出口を設ける等の工夫により課題をクリアーしている。1階に設けられた展示室では開放ゾーンの延長として壁面を公道に面して開放できる工夫がなされている。このような対応性を予め備えておくことは重要なことである。収蔵庫については全体ゾーニングの優先順位により最上階となったが、熱的外乱に対し屋根の外断熱化、既存建物の外周バルコニーを利用した空気層による断熱強化、ルーバーの設置による躯体への日射遮蔽等により克服をはかっている。内装は壁、天井の5面に空気層を持つ魔法瓶構造とし、必要な変温恒湿の空調環境を実現している。空調方式はゾーン別空冷ヒートポンプパッケージ方式とし、集中監視により各種警報監視と発停管理及び計測管理の一元化を行い細かな運転が出来るようにしている。今回の改修でCASBEE評価Aグレードを実現している。 コンバージョンは多くの制約の中で新たなニーズにいかに最適解を見出してゆくかの試行を重ねる作業である。その前提が発注者側に於いてよく了解されていたことが、良い結果に結実したと思われる。本館には将来美術館以外の更なるコンバーションにも対応可能な公共施設としての普遍性が備わっている。表彰に値する良好な改修事例である。 |
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