第19回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰物件 | |
神奈川県立青少年センター |
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所在地 | 横浜市西区紅葉ヶ丘9の1 |
竣工 | 1962年(昭和37年) |
改修年 | 2005年(平成17年) |
建物用途 | 青少年文化施設(改修前後とも) |
建物所有者 | 神奈川県 |
改修設計者 | 株式会社 前川建築設計事務所 |
改修施工者 | 清水建設株式会社 株式会社紅梅組 株式会社 シンデン 浜川電気株式会社 株式会社 アイテック 東京ガス横浜中央エネルギー株式会社 株式会社 神奈川保健事業社 株式会社 川合工業所 相和設備工業株式会社 横浜エレベータ株式会社 |
本センターは前川國男の設計により1962年(昭和37年)に竣工したホールと科学センターから成る複合施設である。同氏の戦後初期の代表作である神奈川県立図書館、音楽堂も隣接して並び建つ紅葉ヶ丘青少年文化ゾーン一帯の景観はそのまま日本の近代建築の歴史でもある。 前川建築の意匠上の大きな特徴である打ち放しコンクリートと大判打込みタイルによる外観については極力原状保存し、後世に継承されている。打ち放しコンクリート部分はリフリート工法によりコンクリートの中性化防止及びアクリル着色透明塗装が行われた。又、信頼性が高いと思われていた大判打込タイル(600×220)は経年により浮き、剥離が生じていたことから全面打診調査の上、アンカーピンによる固定を行い、不良個所ははがして樹脂モルタル成型又はアルミパネルとしている。センター棟に於けるコンクリートの強度、中性化の進行度共それほど悪い状態ではなかったが、耐震性能は極めて低く、天文台、プラネタリウム、4階の床スラブ等を撤去し、いわゆる減築の手法による建物重量軽減化を図ると共に耐震壁設置と柱のせん断補強等を行ってIs値0.6を確保している。又、新たに1階ロビーより2階への専用階段を設けるなど人の動線を再整理すると共に多目的プラザ、科学体験室、情報センターなどを設置して新しい時代のニーズに応えるものとしている。又、ホール棟に於いては座席の幅を46pから52pに広げ千鳥配置にするなど観やすさを向上させた他、ホールの音響条件、遮音性能、空調機能の改善、照度のアップ、舞台の吊り荷重の増大化、搬入部の移設、楽屋の拡張及びアメニティー改善など現代の施設としてふさわしいグレードに改修している。 設備改修に於いては、空調設備では、主熱源に自然冷媒による空冷ヒートポンプ、個別ヒートポンプ空調機はオゾン破壊係数ゼロの新冷媒方式とし、深夜電力による水氷蓄熱方式を導入、衛生設備では、4台ローテーション加圧給水ポンプ、業務用エコキュートを採用、電気設備では、Hf型照明器具と昼光センサー採用の他、EM(エコマテリアル)電線・ケーブルを採用するなど環境対策、省エネルギー対策を重視した機能改善をはかっている。本施設は今後30年以上の使用を目指し、それを前提に作成された維持管理計画書に基づいた維持管理が実施されている。 今回の改修は神奈川県が2002年(平成14年)に策定した「神奈川県県有施設長寿命化指針」に基づき、県が県有施設整備の手法を転換したことを象徴するプロジェクトとして実施された初のモデルとなる大規模工事である。本賞への応募も神奈川県よりなされており、県の営繕行政に於ける施設維持管理への深い理解と真摯な取り組み姿勢が感じられる。本センターの改修は同時期に竣工した多くの公共施設の長寿命化を考える上での示唆に富んでおり、本賞ベストリフォーム部門の優れた事例である。 |
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