第18回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰物件 | |
松田平田設計本社ビル |
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所在地 | 東京都港区元赤坂1-5-17 |
竣工年 | 本館:1960年(昭和35年) 別館:1981年(昭和56年) 新館:1989年(平成元年) |
改修年 | 2006年(平成18年) |
建物用途 | 事務所(改修前後とも) |
建物所有者 | 鰹シ田平田設計 |
改修設計者 | 鰹シ田平田設計 |
改修施工者 | 清水建設 新菱冷熱工業 滑ヨ電工 三建設備工業 東邦レオ 鞄比谷アメニス 田島ルーフィング |
赤坂御所に隣接する松田平田設計本社ビルは、1960年(昭和35年)に本館を建設後、1981年(昭和56年)の別館、1989年(平成元年)の新館と、増築を重ねてきた3棟が寄り添うように連結した集合体ビルで、本館建設から46年を経て、次の50年を見据えた事務所創立75周年記念事業として建て替えでなく改修を選択した。 階高2.9メートルという厳しい制約下で執務空間としての機能性と開放感を与え、同時に変則的なオフィススペースの一体化を図るため、3棟の中央付近の床を抜く「減築」により、3層を貫く吹き抜けと階段を新設して、立体的な視線と動線の広がりを確保するコミュニケーションボイドとしている。同時に太陽高度にあわせてずらしたこの吹き抜けからトップライトに向けて光と風を導き、更にその先の社員が憩い四季の変化を楽しむ屋上緑化に至るまで、全てを一貫した自然環境指向で作り込んでいる。 柱炭素繊維シート巻きの耐震補強や、一人当たり机幅1.8メートルを1.4メートルにスペース効率を上げる家具工事を含め、トイレ、会議室の入れ替え、設備シャフトの再配置など、1フロアごとに改修を進める周到な計画により、仮施設に移転することなく全てを僅か6ヶ月間の居ながら工事で完成させている。 設備維持保全については、自社ビルの改修にあたって可能な限りの環境に配慮した取り組みをしている。既存の室内空間に新設されたボイド空間を利用した自然換気による換気量の向上、建物緑化、屋上緑化、外壁断熱材およびペアガラスによる断熱性能の向上また氷蓄熱システムの採用によって人工排熱量の低減を図っている。室内空間の天井は空調機、照明器具をユニット化し、再利用できるようにユニット部材化して将来のレイアウト変更にも対応できるようにしている。トイレ洗浄水には雨水利用設備、節水型器具を採用している。これらを総合してCASBEE改修Sランクの認証を受けている。竣工年次の違うビルの今後の設備の維持保全計画は空調設備、給排水設備、電気設備などその機器に応じて5年から10年、15年、20年の更新計画を持っている。 外装・躯体以外の殆ど全てを入れ替えた様々な環境技術の集積は、地球環境の保全、知的生産性の向上という時代の要請に応えるだけでなく、それをストック型社会における新しいリノベーションモデルとして、また、所員に対する教材・実験装置として、環境意識改革のメッセージを具体的な姿で社内外に発信するものでもある。 赤坂御所の石積に連なる1階アプローチ部分の石積保存など、創立からの歴史や町並みへの敬意の表し方に、これからも永くこのビルを使い続けていくことを期待させる愛着と決意が伝わってくる取り組みとなっている。 |
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