第18回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰物件 | |
大成建設 技術センター本館 |
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所在地 | 横浜市戸塚区名瀬町334-1 |
竣工年 | 1979年(昭和54年) |
改修年 | 2006年(平成18年) |
建物用途 | 研究所(改修前後とも) |
建物所有者 | 大成建設 |
改修設計者 | 大成建設活鼡煙囃z士事務所 |
改修施工者 | 大成建設 |
本館は1979年に竣工した研究施設であるが、30年弱経年するなかで顕在化してきた課題を居ながらのリニューアルにより解決し、新築にも勝る空間性と機能性を獲得することに成功している。 リニューアルの要件のうち耐震性能、環境性能の改善など技術的に対応可能な部分に比して、空間の質の再生はなかなか困難な場合が多い。特に機能性、経済性が論理的に追求された高度成長期の建物であれば、余剰の部分が皆無であることから身動き出来ない状況に陥るケースも珍しくない。本件の改修は既存施設に「CREATIVE BOX」と称する吹抜けを内包した箱を付加させることで種々の課題を一気にブレイクスルーしている点に特徴がある。この箱の開放感と連続性、一体感に満ちた吹抜けが従来の研究空間をイノベーションを育む現代の研究スペースとしてふさわしい空間に変貌させている。吹抜けを設けることで新たな動線や視線の交流が生まれコミュニケーションを誘発する手法は必ずしも新しいものではないが、ここでは既存部の自然換気を促すヒートチムニーとしても機能させている。増床部分の床(ダクタルAFスラブ)は100mmの二重床からの全面床吹出し空調により、クリエイティブスペースとして良好な空間環境を構築している。吹抜け部分は上部を全面トップライトとしているがチェッカー柄のプリントが施されたETFE(フッ素樹脂製)フィルム二枚重ねによる調光機能を持たせたり、アルミエンボスミラーによる間接光システムを設置し柔らかな光環境を実現している。 また、既存研究オフィスの天井に於いては空調や照明、スピーカー等をユニット化し各人のデスク上のPCからコントロール可能なパーソナル空調を採用している。吹出し口の位置も簡易に変更できるよう工夫されており、快適性向上と環境負荷低減に寄与している。 さらに既存部分一階では縦格子鋼板補強工法により耐震補強を実施している。これはデザイン性と施工性を両立させるべく開発されたものである。「CREATIVE BOX」のファサードのカーテンウォールには縦方立部分に自然換気装置が仕込まれ、中空層の厚さを20pに薄型化したダブルスキンの一体型ユニットが採用されており、軽量で施工性に優れ、工期も短縮可能であり、外壁のリニューアルにふさわしいものとなっている。 リニューアル関連技術は分野毎に種々な開発技術が登場してきているが、重要なことはそれらをうまく組み合わせてひとつの建築にインテグレートしてゆくことである。本建物には総合建設業の会社の「技術センター」にふさわしく、新規に開発した技術が実験的段階のものも含めて満載されており、真に技術のショールームの様相を呈している。時代のキーワード「環境負荷低減」、「LCCO2の削減」に最も逆行するのがスクラップアンドビルドである。本件は新しい環境を創造するに際して新築による以外にリニューアルが充分有効な選択肢であることを証明している好例である。 |
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