15回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰物件

国立国会図書館国際子ども図書館

所在地 東京都台東区上野公園12-49
竣 工    1906年(1期)1929年(2期)
改 修    2002
用 途   図書館(子ども図書館)(改修後)
    図書館(国会図書館支部)(改修前)
所有者   国立国会図書館
    国土交通省関東地方整備局営繕部
改修設計者 安藤忠雄建築研究所
      鞄建設計
改修施工者 轄ヲr組、潟アテック、潟_イキンアプライドシステムズ、鰹ャ泉住産、中央エレベータ工業

 「東京都選定歴史的建造物」に指定されているこの建物は、J.コンドルに師事した文部省技師久留正道・真水英夫らにより設計された旧帝国図書館(1906年第一期竣工)が前身である。平成5年度から行われた構造調査により大規模な構造補強が必要と判定され、博士論文の収集閲覧機能が関西館に移されるのを機に内外装修復・耐震補強工事とともに「国際子ども図書館」としてリフォームされることとなった。
 リフォームにあたっては、創建当時の荘厳な内外装をそのままに生かすように周到な注意が払われている。特に、閲覧室に到る西側増築部の廊下のファサードは、ガラスのカーテンウォールで構成して歴史的洋風建物のもつ重厚感のある表情を透けて見せると共に対比させる巧みな構成としている。FR鋼の方立は、増築部を支える本体構造の柱を兼用させ、視覚上の障害となる柱を消し去っている。内装も可能な限り創建時のまま生かす考えを貫いている。漆喰天井・柱はその装飾とともに本来の漆喰塗りに修復し、貴賓室の漆喰仕上げは現場調合の在来工法を採用するなど伝統技術の伝承も図っている。
 耐震補強は、免震装置を上下に切り離した地下階に挿入する免震レトロフィット工法を採用して行い、内外装への影響を与えないよう配慮されている。また、免震クリアランスはドライエリアを活用するなど工事の安全やコスト削減にも工夫がされている。
 設備については歴史的建造物を守るため意匠性を重視し、創建時の内外観を損なわないように充分な配慮をしている。機械室などは、震動、騒音を配慮して本体と縁を切り、中庭の地下に集めている。完全に切り離せたことを含め集中的に管理することのメリットは大きい。空調方式は、既存天井・壁の意匠を損なわないように床吹き出し空調を採用し、吹き出し口も家具の中に組み込むなど様々な工夫が施されている。また、省エネに配慮して中間期にはモーターダンパーによる自然換気の取り入れも行っている。
 この「子ども図書館」は、一般利用者への閲覧サービスはもちろんのこと、国内外の児童書や関連資料の収集・集積と情報発信、研究センターとして100年目の節目に生まれ変わり、次の100年に向けて更なる長寿命化への道を歩み続けることが期待される。