第14回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰物件
横浜情報文化センター・横浜都市発展記念館・横浜ユーラシア文化館
所在地 横浜市中区日本大通11・12番地
竣 工 1929年
改 修 2000年(横浜情報文化センター)
2002年(横浜都市発展記念館・横浜ユーラシア文化館)
用 途 展示場・事務所(改修前)
博物館、図書館、事務所、飲食店(改修後)
所有者 (横浜情報文化センター)(財)横浜産業振興公社
(横浜都市発展記念館・横浜ユーラシア文化館)横浜市教育委員会
改修設計者 (横浜情報文化センター)(株)日建設計
(横浜都市発展記念館・横浜ユーラシア文化館)横浜市建築局教育施設課・(株)日建設計
改修施工者 (横浜情報文化センター)
鹿島建設(株)、和同建設(株)、(株)共栄社、新興電設工業(株)、(株)江電社
エルゴテック(株)、大澤工業(株)、日宝工業(株)、川本工業(株)・昭和設備工業(株)
(横浜都市発展記念館・横浜ユーラシア文化館)
和同建設(株)、(株)共栄社、(株)神奈川保健事業社
この3つの機能を持つ建物は、横浜市の事業として、昭和4年に建設された「旧横浜商工奨励館」地上4階(設計:横浜市営繕課)と「旧横浜市外電話局」地上4階地下1階(設計:旧逓信省)を保全再生し、新たに新築部分地上12階地下3階を加えた複合文化施設として、2002年7月に竣工している。
横浜市の都市デザイン室が定めたまちづくりガイドラインに従い、新旧の建物が調和し、日本大通り地区再生のプロトタイプとして周辺の歴史的景観の保存再生に寄与している。
改修にあたって、特に注目される点は、「旧横浜商工奨励館」が昭和50年頃より、空家状態になっていた為、外装躯体の損傷劣化が急速に進んでいた。その為、既存躯体を健全な状態に再生させるため、電位差により特殊アルカリ溶液を確実強制的に浸透させる、電気的再アルカリ化工法が採用(国内最大規模)されていることである。
耐震的には耐震壁の補強及び、新設によりIs=0.75が確保され耐震安全性が確保されている。
また、内部では各階の丸柱とアーチ状のハンチ梁の意匠が特徴的である。その為に、空調や防災設備の配管配線の為に前面2重床が採用され、建築基準法旧38条特認による排煙設備の区画免除等の工夫が行われ、当時の雰囲気を醸し出すことに成功している。
外装外壁は既存のイメージを残すために、極力既存の仕上げ材を補強補修し利用されているが、新築部分や、剥離が著しい部分については現代の技術で忠実に復元再生されている。
この建物が成功しているのは、設計者の取り組みに対する真摯な態度である。しかしながら、最も賞賛されるべきものは、地下鉄のルートを変更させてまでして、日本大通りの歴史的景観の保存再生に取り組まれた横浜市の姿勢であろう。