第13回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰物件
ふれあい横浜メディカルセンタービル
所在地:神奈川県横浜市中区万代町2−3−3
用 途:病院・シニアホテル(改修後)
ホテル(改修前)
竣 工:1989年(平成元年)
改 修:2002年(平成14年)
所有者:泣<fィカルドリーム
改修設計者:活ノ藤喜三郎建築研究所
活イ設計
改修施工者:清水建設
ふれあい横浜メディカルセンタービルは典型的なコンバージョン・プロジェクトである。
当初は平成元年に関内駅前の超高層ホテルとして竣工し話題を呼んだが、MM21地区の開発発展によって横浜のビジネスの中心が移動をしてしまうという現象に加え、当時の経済情勢にも恵まれず、ホテルとしては2000年1月に閉館となった。その後関係者の努力の中で、医療・福祉・教育施設を幅広く展開をしていた医療法人「ふれあいグループ」がその立地を評価して「ホテルを病院に換えられるのでは」という思い切った発想で検討を重ね、コンバージョンを成功させる結果となった。
高層部は高齢者を対象とした長期滞在型のホテル、低層部は都市型の病院である。ホテルと病院は基本的に類似点が多く、そのことがこのコンバージョンを可能にした。ロビーは待合室、宴会場やレストラン、結婚式場等は外来・中央診療部門、客室は病棟といった具合に、ゲストにホスピタリティを提供するという意味では似ているのが当然なのかもしれない。設備についてもシステムや負荷容量など類似点が多い。この病院では婚礼相談部門を救急部門に、貸し衣装室を各種検査室に、さらに結婚式のためのチャペルは手術室にコンバートしている。最大の空間である大宴会場はシャンデリアもそのままにリハビリセンターになった。インテリアのデザインは出来るだけホテル時代のものをそのまま残してあり、費用がかさまないという効能以上にホテルのように暖かくゆったりとした居心地のよい医療空間になった。ホテル部分はコンバージョンの後もホテルなので基本的には変わらないのだが、長期滞在をする高齢者に対する配慮にあふれており、その行き届いたサービス、きわめて便利な立地等の特徴と相まって人気のある施設だという。
計画に当たって最初にクリアすることを要求されたのは法的な条件だという。ホテルと病院の動線上の完全な分離、総合設計制度による高さと容積の緩和を受けていること、さらにホテルより大きな病院の階段幅員の規制等々であった。そのため屋外階段をフレーム内で入れ替えたり、屋内にゆったりとした階段を新設したりしている。エレベーターについても、3台あったホテル客用エレベーターの内2台分を1台の横向きの大型に変えているのだが実にうまく収まっている。機械室を見ると最小の空間の中で余りに器用に収められているので将来の更新時にはさらなる工夫が必要になりそうである。
いずれにしても事業者の高い見識、強い意志、それを支えた設計と施工のチームの努力の成果である。