第31回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物 |
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富士屋ホテル |
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所 在 地 |
神奈川県足柄下郡箱根町宮ノ下359 |
竣 工 |
1891年 |
改 修 年 |
2020年 |
建 物 用 途 |
ホテル |
建物所有者 |
富士屋ホテル |
改修設計者 |
叶ホ本建築事務所、褐囎カ(協力)、 笈タ芸構造計画事務所(協力) |
改修施工者 |
鹿島建設梶A鰍ォんでん、菱和設備梶A叶シ原衛生工業所、 三菱ビルテクノサービス梶A三菱電機 |
富士屋ホテルは、明治11年(1878年)創業の140年を超える歴史のクラシックホテルである。明治、大正、昭和の各時代の経営者の夢を実現した個性豊かな建築群が、歴史的積層として、ひとつのホテルを構成する稀有な存在である。 2013年の耐震改修促進法の改正を契機として、利用客と従業員の安全・安心を確保する耐震改修工事の実施が決定され、未来への持続的な営みを実現することが改修事業の目的とされた。そのため、文化財的価値の保存と耐震安全性・防災安全性の確保、機能性・快適性向上の両立を目指し、4年間に及ぶ調査・計画・設計と約2年間のホテルの休業による改修工事によって、新たな価値を得た富士屋ホテルとして蘇らせている。 耐震改修では、文化財的価値を有する空間の保存に配慮し、「意匠の保存」を最優先し、補強部材を床、壁、天井の内部に設置し露出させない計画としており、それによって、改修前とほとんど変わらない姿で、快適な空間の提供を可能にしている。 防災改修では、本館・食堂棟は、耐火建築物の法的要求に対し、床・壁・天井内への防火被覆の挿入による準耐火建築物化と代替措置としてのスプリンクラー、ドレンチャー、炎感知器等の設置により法適用除外指定を受けている。食堂棟メインダイニングルーム天井にも新たにスプリンクラーが設置されたが違和感なく納められ、全館避難安全検証法により木製の内装の保存と避難安全性の両立を確認している。消防法上は、全館を現行法に適合させ、ほとんど変わらない姿で防災安全性を各段に向上させている。 機能性・快適性の向上のため、バリアフリー対応はもとより、本館ロビー廻りのオーシャンビューパーラー、フロントレセプションを本来の意匠に復元し文化財的価値を高めると共に、本来の広がりのある快適な空間を蘇らせ、また、客室の快適性向上のために、本館や西洋館の小規模客室は、2室を一体化したスイートルームにするなど、将来を見据えた再編を行っている。客室の水廻りは、各客室のインテリアに調和し、各客室のグレードにふさわしい、快適な水廻り空間に全面リニューアルしている。 設備改修では各基幹設備および主配管配線含め全面更新して、施設全体のエネルギー消費量を削減している。 維持管理計画では、箱根町特定歴史的建造物としての保存活用計画を策定して長期的な維持管理計画を定めている。日常的な点検と修繕はホテル内の専属部署が行い、劣化や不具合箇所の早期発見に努め利用者の安心安全、快適性を維持する体制が備わっている。 大規模宿泊施設としては前例のない法適用除外指定を受けたことは、今後の建築物の保存活用の手法の一つとして高く評価できる。 |
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