第31回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰建物

新宿住友ビル

所  在  地

東京都新宿区西新宿2-6-1

竣     工

1974年

改  修  年

2020年

建 物 用 途

事務所、集会場、店舗、駐車場、屋外広場

建物所有者

住友不動産㈱

改修設計者

㈱日建設計、大成建設㈱

改修施工者

大成建設㈱

新宿住友ビルは日本初の200mを超える超高層ビルとして47年前に建設され、西新宿のビル群の中でもその特徴的な形態から“住友三角ビル”と呼ばれて親しまれてき
た。しかし
1970年代の建設当時に比べると、現代社会の中では都市空間の価値観が変化してきており、人々が集い、憩い、賑わう空間が求められるようになってきた。当時新しい都市空間の先駆けとして次々と超高層ビルが建設された西新宿エリアでは、アクセス動線の利便性が重視され、地下通路と直結された暗い地下空間から地上空間を経ず直にビルのロビー、エレベーターホールと連結されており、超高層ビルの足元空間は、ヒューマンなスペースとは隔絶された寒々しい外部空間となってしまっている。また、建設後にこのエリアまで地下鉄が延ばされてはいるが、やはりJR新宿駅との物理的距離は如何ともしがたく、未だにこのエリアを“陸の孤島”と呼ぶ人も少なくない。

そんな中で既に20年以上前から「都市の賑わいの活性化」構想が検討されていたのは必然かもしれない。しかし、この構想を、それも建て替えではなく改修・増築で実現するまでの道のりの険しさは想像を遥かに超えるものがある。都市計画上の制約や建築基準法遡及など様々なハードルをクリアして、且つ10,000人のビル利用者がいるなかでの“居ながら改修”には、例え上位構想による防災強化、特区指定、規制緩和の後押しがあったとしても、並大抵の努力で成し遂げられるものではなく、関係者の企画力、設計力、施工力、そして何よりも粘り強さは称賛に値する。

足元広場を無柱大空間としてガラス屋根で覆い、構造的に既存ビルと切り離すために新設躯体、エキスパンションジョイントのディテールに様々な工夫がなされている。また、被災時にはこのアトリウムに約 2,850 人の帰宅困難者を受け入れる一次避難場所として機能することから、3500kvA のガスタービンと 52,000ℓのオイルタンクを増設し、BCP 対策を強化している。

既存建物はアスペクト比 4 のスレンダーな建物であり、チューブ構造の超高層ビルのため、曲げ変形が卓越し、通常の制震補強では十分に効果が得られない。そのため、耐震性能向上のために制振補強化を図り、建物の三角端部の設備バルコニーにチューンドロッドと回転慣性質量付き制震ダンパーを設置することで効果的な応答制御を実現し、居ながら工事を可能としている。

まだまだスクラップビルドが主流を占める現代社会において、“建て替えによらないRe-Innovationで新築を超える付加価値向上”が見事に実現されたプロジェクトであり、築後50年近くを迎える初期超高層ビルのこれからの再開発構想に間違いなく影響を与えるであろう。


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