第19回BELCA賞選考総評
BELCA賞選考委員会委員長  内田祥哉
 BELCA賞は、良好な建築ストック、つまり社会の中で生き生きと活用される建築の形成に寄与することを目的に設けられた賞である。賞を二部門に分け、周到な長期計画で、安定した維持保全を継続しているものをロングイフ、活躍にかげりの見えてきた建物を、巧みな改修によって現代社会に蘇生させたものをベストリフォームとし、平成3年から前回まで計18回、表彰件数は176件を数えている。

 ロングライフ部門では、所有者、設計者、施工者、維持管理者の四者を、ベストリフォーム部門では、所有者、改修の設計者、施工者の 三者を表彰している。昨今の地球環境問題にともなう建築物の長期利用の気運を背景に、BELCA賞への関心は年々高まりつつあるが、現代社会の中で活躍するためには、ロングライフ部門でも、照明、衛生、空調などの面では抜本的改造工事が必要になっている。他方ベストリフォーム部門でも、建物の歴史的経験を保存する傾向が増しているため、近年は両部門を区別しないで合わせて10件を選考している。その結果、本年はたまたま昨年同様、ロングライフ部門4件、ベストリフォーム部門6件を表彰することになった。

 今回表彰されるロングライフ部門は、日本を代表する通信技術の研究開発拠点、開通間もない東名高速道路の始発点を印象づけた化学系本社ビル、歴史ある大学と伝統を尊ぶ中学高校のキャンパスが選ばれたが、いずれも、新築当時の設計が、将来を見据えた配慮に基づくものであった。またそれが、後の維持管理の中で、有効に生かされていることで、この度の選に残った。

 ベストリフォーム部門でも、商工会議所を美術館にしたもの以外は、用途変更を伴わない物件で、二つの大学は、何れも外観を保存しながら、将来の機能を大きく変えたり、様々な耐震補強を組み合わせて教材とする改修であった。ホテルは使いながらの内外装一変の効果が注目され、文化施設では、あの手この手の耐震補強と設備の更新が評価された。特記すべきは木造の芝居小屋の復活で、粘り強い市民運動が町起こしにまで繋げていることで高い評価を獲得した。

 審査を顧みて、本年の応募案件はこれまでにない優れた物件ぞろいであったため、選考委員のあいだでは、早くから選考の難しさが予想されていた。残念ながら本年の選考に漏れた作品には、入選案に劣らぬ優秀な維持管理が行われているものもあるので、それらについては再度の応募を期待したい。また、此の分野の技術は、ますます多角的に展開されているので、応募作品の水準も、年ごとに高まることが予想されている。

 BELCA賞も回を重ね、周知の範囲は広まってきた。しかし未だ受賞物件のない県が15県もあり、建物の維持保全技術の全国的普及向上を目指す賞の趣旨から、未入選の地域からの応募も切に期待したい。
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