第12回BELCA賞選考総評
BELCA賞選考委員会委員長 内田 祥哉
BELCA賞は適切な維持保全を実施したり、優れた改修を行った既存の建築物のうち、特に優秀なものの関係者をロングライフ、ベストリフォームの2部門により表彰し、わが国における良好な建築ストックの形成に寄与することを目的に設けられた。
平成3年よりはじまったBELCA賞は、これまでに11回、合計で106物件の建築物の関係者を表彰し、今回の表彰で第12回を迎えることとなった。
BELCA賞の知名度も年々高まり、少しずつではあるがユニークな賞として評価をいただいていることから、第12回のBELCA賞も全国から多数ご応募をいただいた。
前回から、表彰物件数を「各部門5物件以内」から「両部門合わせて10物件以内」としたが、選考の結果、今回もロングライフ部門、ベストリフォーム部門それぞれ5物件、合計10物件を第12回のBELCA賞として表彰することとなった。
両部門の応募物件のレベルが拮抗していることの証左とも言えるだろう。
ロングライフ部門で表彰する5物件については、事務所、博物館、学校、工場と幅広い用途の物件が選ばれており、二十年以上にわたって関係者が不断の努力で維持保全に努めてこられた優秀な物件ばかりであり、「建築物の長寿命化」という今後われわれが取り組まねばならない課題に対し、答えが与えられるものと期待している。
一方、最近では建築物の用途を変えて活用しようとする「コンバージョン」が大変注目され、リフォームやリニューアルへの関心がますます高まっている。このため応募物件のレベルも高く、ベストリフォーム部門は激戦となった。五つの表彰物件はこの中から選ばれた優秀なものばかりであり、リフォームに関し新たな知見や手法を提供している。また、今回はPFIの手法を用いた物件もはじめて受賞し、世の中の動きを反映している。
過去の受賞物件を見ると東京が圧倒的に多く、関東地方で過半に迫るほどで、今回もその傾向は変わらない。しかし、関東の中で、これまで表彰物件のなかった茨城県に初の受賞物件が出たことを喜ばしく思っている。今後も、BELCA賞の全国への更なる浸透を期待したい。
今回表彰される物件が、わが国の優良な建築ストックの範となるものと確信しており、受賞物件の関係者に対し、深く敬意を表したい。
また、BELCA賞の発展が、わが国の良好な建築ストックの形成に寄与することを願うものである。
なお、今回の選考に入る直前、内井昭蔵副委員長が急逝された。選考は三菱地所設計の清水委員に副委員長代行をお願いすることになり、無事に選考を終えることができた。内井氏のBELCA賞に対するご貢献に心から感謝し、謹んでご冥福をお祈り申し上げたい。