第12回BELCA賞ロングライフ部門
三井物産本店ビル
所在地:
用 途:事務所
竣 工:1976年(昭和51年)
所有者:三井物産
設計者:鞄建設計
兜嵩。構造力学研究所(構造)
施工者:鹿島建設
三井建設
大成建設
樺|中工務店
維持管理者:物産不動産
このビルは、日本を代表する総合商社である三井物産の本社ビルとして、昭和51年(1976年)にお濠を前にした敷地に姿を現し、以来、お濠を取り巻く景観の重要な要素を形成して、今日に至っている。
竣工当初は我が国の近代的なオフィスビルのプロトタイプとして、その後のオフィスビルの計画に大きな影響を与えた建物である。
建物の計画としては、設計当初から、厳密なシステム構築がなされており、3.2mモジュールを厳密に守って計画され、26年を経過した現在に至るまで、当初の設計思想に基づいてシステムが充分、機能を果たしているのは見事である。
また、設計の当初からビルのメンテナンスを考慮にいれた計画がなされており、一例を挙げれば、床のタイルカーペットの、施工、クリーニング、メンテナンスを含めたシステム化などは、その後のタイルカーペットのオフィスビルヘの普及に大きな影響を与えている。
設備に関しても将来の需要の増加や変化に対応出来るシステムが考えられており、メンテナンスの事も十分に考慮に入れた設計になっていることが、この建物が26年を経過してもいまだに最先端のオフィスとして使い続けられている理由であると考えられる。
なお、外部環境に関しては、建物を高層化することによって出来る外部の空地を、お濠の緑の連続として捉え緑地と池を造っており、これらは「カルガモの池」として周辺のオフィスワーカーにも親しまれている。昨今叫ばれるようになった、環境への配慮が当初からなされているのも、時代を先取りした計画であると言える。
設備計画については、当初計画時から、いくつかの維持保全に対する工夫がなされており、特に、基準階に設置された点検口を兼ねた照明器具は、蛍光管の交換を容易にし、しかも天井内点検の安全性を考慮した、特別にディテールを工夫したユニークなシステム天井となっている.
建物の保全計画に関しては、整備された維持保全計画と長期修繕計画が作成されており、毎年の予算化と当核年度の詳細維持保全計画の作成も行われている
そのうえで、作成された維持保全計画及び修繕計画の実施に当たっては建設当初からの設計事務所、施工会社、管理会社も参加した検討を行った上で実施計面を立案し、建物を構成する部材・機器の延命に努力しているのは特筆すべきである.
このような良質なオフィスビルが今後数十年にわたり使い続けられてこそ、我が国の建築ストックは豊かになってゆくのではないかと感じられる建物である。