第12回BELCA賞ロングライフ部門
飯野ビル
所在地:
用 途:事務所
竣 工:1960年(昭和35年)
所有者:飯野海運
設計者:樺|中工務店
施工者:樺|中工務店
維持管理者:イイノ・ビルテック
この建物は日比谷公園を臨む、優れた環境のなかにある。
1942年の竣工以来既に42年を経ているにもかかわらず、イイノホールの社会的貢献とともに第一線のオフィスビルとしての名声は現在でも揺るぎない。建築主の高い理念と、この理念を建築に結晶化した技術が現在においても強く生命力を発揮していることの証左であろう。
竣工当時のたたずまいは、行き届いたメンテナンスにより現在も良好に維持されてる。
構造体に対する調査の結果も良好であった。特にバランスよく耐震壁が配置されていることにより、耐震補強の必要がないことが確認されている。
建物内部も綿密な建物維持保全計画に基づいて改修が施されている。
時代の要請に応えての快適な空調環境の更新が、環境負荷の低減化と積極的な省エネルギー化を伴って実現されていること、さらにアスベスト対策、PCB対策、フロン対策など、その試みは広範に及び、確実な成果を上げている。
さらに特筆すべきは、これらの維持保全計画が、ビル所有者、ビル管理者、施工会社の三者による「技術検討委員会」によって毎月定期的に精力的に行われていることである。
これから実施されるエレベーターホールの改修も、竣工時の雰囲気を大切に守ることをテーマにこの三者で鋭意検討が進められており、その成果が期待できる。
かつて、時代の先端を担った多くの建物が、「非効率」との理由によって建て替えを余儀なくされ、消えていく中にあって、半世紀近い年月を得て尚、その存在価値を確かなものにしつづけている意義は大きい。
このビルを誇り、愛しみつづけ、今日に至らしめたビル所有者と管理者の姿勢と努力が第一に賞賛されなければならない。