新大手町ビルは昭和34年に竣工、同45年に増築を経て、これまで賃貸用オフィスとして利用されてきたが、今後更にロングライフビルとして使い続けられるよう改修されたものである。
改修に当たって、単に壊して過去の記憶を消し去ってしまうのではなく、建物を使う人たちの記憶にオーバーレイさせる事を意図し、旧外壁面を新規カーテンウォール越しに微かに見せるなど随所に工夫がなされており、設計者の意欲が感じられる。
ペリメーターにファンコイルユニットを設置するため、竪配管を窓の両側に設け、「ファンコイルシャフト」と「外装ガラスカーテンウォール」を一体化させた手法は、現代的なファサードの構成と機能を両立させており、成功しているといえよう。
高機能化するオフィスビルへのテナントニーズに対応すべく、OAフロア化とOA分電盤の設置、連続調光型HF蛍光灯による自動調光化、ペリメーターへの天井カセット型ファンコイル(1スパン2台)とコンパクト型空調機による個別空調化を図っている。改修にあたっては現行法令への対応も図られているが排煙については不適格となっているのが残念である。
改修工事にあたっては、外装は外部からの作業を主体に行い、内装は土曜・日曜に作業を行うことで、居ながら工事を実現している。これらは、管理者・設計者・施工者・テナントの4者が一体となっての綿密な計画がなければ到底できえなかったであろう。
当然のことながら、本建物は旧耐震基準で設計されているが、バランスのよい平面形状と比較的壁量が多いことから、もともと基本耐震性能のレベルが高く、最少の補強で済ませることができた。補強後の事務室の使い勝手に大きな影響を与えなかったことは幸いであった。
本建物は今後20〜30年のロングライフ化を目指しており、長期修繕計画のもとに、維持保全と運営管理が行われている。
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