第12回BELCA賞ベストリフォーム部門
上越市市民プラザ
所在地:新潟県上越市土橋1914−3
用 途:文化施設(改修後)
商業施設(改修前)
竣 工:1985年(昭和60年)
改 修:2000年(平成12年)
所有者:上越市
改修設計者:褐F谷組一級建築士事務所
改修施工者:褐F谷組
1971年に高田市・直江津市合併で誕生した新潟県上越市がまちづくり構想の一環として、旧市中間地点の国道沿いにある経年10年の2階建スーパーマーケットの土地を購入し、建物を無償で引き受けて市民プラザヘ再生して2001年3月にグランドオープンしている。施設計画について、5年間の思案熟慮の後、1999年7月のPFI法公布に合せて、民間の知恵と資金の活用、資源の有効活用、魅力ある新しい市民施設づくりを旨とした既存建物リニューアルによるPFIプロジェクト事業とすることを、その12月に公表している。設計・建設・維持管理・中長期修繕と民間テナント運営などを含めた20年間のリスクのある契約となっており、公共負担削減効果として12・6%を見込むとともに長期にわたる継続サービスと集客力を低下させないための魅力的な空間づくりや、地域利用者定着型の施設づくりに創意工夫が凝らされている。
市民プラザの設置目的は、活発化してきた多様な市民活動に対する機会と場の提供と、積極的なまちづくり活動への支援としている。市民活動の推進拠点として、NPO・ボランティアセンター、男女共同参画推進センター、国際交流センター、環境情報センター、こどもセンターの5つのセンターがコンパクトに配置されており、市は各種講座や情報提供など行ないながら活動支援にあたり、市民グループも独自の催しの企画・運営を活発に行っている。ホール、工芸室や調理室、音楽スタジオ、ギャラリー、7つの貸会議室と和室なども種々の市民活動の場として設置されている一方、民間テナントとしてスポーツクラブ、ビューティサロン、レストランなども入居している。オープンした最初の一年間来館者数は、予定の20万人を大きく上廻って50万人に達して、先行きのよいスタートといえる。
建物改修としては、入口正面のほぼ中央部の1×2スパンの床スラブ2階分を撤去して、屋上階までの3層の吹抜けと階段を新設し、屋上部は全面ガラス張の交流と冬期日溜りのスペースとし、吹抜けに光と風を取り込んで、建物全体に明るさと開放感、空間認識のしやすさと回遊性を付加して効果をあげている。屋上広場や旧車路スロープに人工芝を張って、子供や老人の安全な遊び場となっている。既存建物調査・診断から判断して、既存の外壁面・躯体・設備等を保存して廃棄物削減と資源節約をはかり、太陽光発電やエコマテリアル採用と相俟って、環境共生と事業採算性をはかっている。
遊休施設の再生・改修という難問に対して時宜を得た絶妙の事業化への決断と実施、ソフト・ハード両面での最良解答−TPOのぴったり合致したリフォームの成功例といえよう。