第12回BELCA賞ベストリフォーム部門

茨城県立図書館


所在地:茨城県水戸市三の丸1−5−38

用 途:図書館(改修後)

    県議会議事堂(改修前)

竣 工:1970年(昭和45年)

改 修:2000年(平成12年)

所有者:茨城県教育委員会

改修設計者:茨城県土木部営繕課

      鞄建設計

改修施工者:樺|中工務店

      鰹コ和建設

 水戸市三の丸は、県本庁舎及び分庁舎、同議事堂、警察庁舎などが建ち並び、かつて県行政の中心的役割を担ってきた場所である。

その内、県庁本舎は歴史的建造物として保存され、さらにこの県会議事堂は県立図書館として再生され、三の丸は新たに県民の交流の場所となった。これら残された二つの建物は造られた時期も作風も全く異なっているが、あらたに整備されたランドスケープによりそのたたずまいはこの地の景観に時代を超えた心地よい調和を醸している。

議事堂は1970年に竣工したものであるが、図書館として新たな活動の舞台を得るに当たり、「議事堂としての記憶を形に残す」ことと「空間の原型を残す」ことが再生のテーマであった。その成果は三の丸の景観形成だけではなく建物の内部空間にも連続的に展開されている。特にエントランスホールや議場は、議事堂建築を象徴する空間であったが、図書館のエントランスホール及び視聴覚室となってもかつての空間の生命力を損ねてはいない。そして、運営上に何らの支障もなく、あらたな時代の要請に充分に応えている。

何よりも、市民からも利用しやすい図書館として多くの支持を得、活発な活動が行われていることは実に喜ばしいことである。

耐震補強や荷重条件など、構造的な対策も合理的に解決されており、さらにエントランスホールの吹き抜け空間を利用したレターンシステムは優れた空調環境と、ダイナミックで開放的雰囲気の閲覧室の創出に成功している。

その他の老朽部分に対する改修も万全である。

かつての「議事堂」としての空間の特性を図書館という全く異なった機能へ、違和感をもたらすどころか、むしろ当初から図書館のためにしつらえられていたのではないかと錯覚させるような再生は、今後長期にわたり多くの支持を得ていくことが期待できるものとして高く評価される。