第15回BELCA賞ロングライフ部門表彰物件
ダヴィンチ銀座(旧リッカー会館)
所在地 東京都中央区銀座6−2−1
竣 工 1963年
用 途 事務所・店舗
所有者 モルガン信託銀行
泣Cル・カヴァーロ
設計者 鹿島建設
施工者 鹿島建設
維持管理者 ユーネックス
本建物は、1963年当時のリッカーミシンの本社ビルとして竣工したものである。
また、その年の日本建築学会賞を受賞している。
1989年以降、ダイエーのテナントビルとして使用されていたが、バルコニーに屋外機が並び、竣工当時の外観が損なわれていた。2002年所有者がダイエーから現在の所有者に代わり、2003年耐震補強工事を含む大規模工事が実施され、外観が損なわれることなく竣工当時の外観がよみがえり、ダヴィンチ銀座ビルとして、生まれ変わったものである。
また、銀座地区には、大きな貸しビルは数少なく、現在の容積率制限のもとでは、新規の建替えでは現在の床面積を確保することが出来ないというデメリットもこの建物が大規模改修でよみがえった理由の一つでもある。
このビルは正面が西を向いており、四季を通じて西日を受けるという立地である。西日を遮断し、しかも内部からの眺望を確保する目的で、通常のサッシとは別に、バルコニーの外側にグレーペンのガラスで覆われたアウタースキンがついている。
現在でいう環境配慮建築のダブルスキンのさきがけとなる建物といってよい。
また、ステンレスの方立ての細い垂直線とグレーペンのガラスの構成が、このビルのファサードをエレガントにしている。
通常の耐震改修では、外部にブレースが設置され創建当初の外観が損なわれることが多い。
この建物は、施主、設計者の熱意により、構造スリットの新設、壁の増し打ち補強ばかりでなく、柱、梁に対してハイブリッド補強工法(RC巻立+鋼板巻き補強工法)を採用し、フレーム全体の耐力と粘り強さを向上させて、外観を損なうことなく耐震性能を確保している。
空調設備の面では、熱源集中のエアハンドリングユニット方式から、ビル用マルチを用いた天井隠蔽型ヒートポンプパッケージユニット方式に変換し、地階熱源機器、各階空調機、さらには地階受変電設備を屋上へ移し、貸室面積を増やすとともに、冷房負荷増大にダブルスキン間のバルコニーに屋外機を設置し対応していたため、ファサードの印象を台無しにしていた点を解消している。
また、空調機械室などのアスベストを、改修時に完全除去している。電気設備の面では、有効天井高を増加させつつフロアダクト方式をOA床方式に変更し、将来的にも十分な電気容量を確保するとともに、高効率照明器具を採用している。また、両設備とも各階1テナント対応から4テナント対応へ変更し、水回り設備も適切な改修をするなど、貸しビルとして魅力あるものにする努力が随所に見られる。
内装もすっかり、デザインが一新され、40年前の建物とは思えない新しいテナントビルとしてよみがえっている。