第14回BELCA賞ロングライフ部門表彰物件

天照皇大神宮教 本部道場

所在地    山口県熊毛郡田布施町波野123
竣 工    1964
用 途    大道場、小道場、事務室、会議室ほか
所有者 宗教法人 天照皇大神宮教
設計者    大谷 幸夫
施工者    清水建設(株)
維持管理者 宗教法人 天照皇大神宮教

 本建物で特記されるべきことは、建築活動における施主と設計者と施工者の3者の連携が理想的に且つ高い水準で成立し、1960年以来今日まで継続していることである。その最大の理由は、この本部道場の建設自体が教団の宗教活動そのものと捉えられ、神教の実践の場とされていることにある。

 コンクリート用骨材(川砂)の採取、打放しコンクリートの打設、石積み、コンクリートブロックの製作などが、教団の教祖の指導により、ほとんど素人の同志の労務奉仕によっている。この姿勢は、現在進行中の建築工事においても縦続されている。さらに建物の竣工後のメンテナンスにしても、教団の同志の目と手によって綿密にそして誠実に行われており、教団の活動の展開に沿って新たな建築的対応を必要とする事態も、当初の連携を崩すことなく3者によって検討され対応措置がとられている。

 建物竣工後、30年経過した時点で外壁面の水洗いおよびフツ素樹脂塗装を行っている。大壁面である事、高さがあることから足場計画で工夫をしている。また同時にトップライトの交換を行っている。

 設備配管については、建設当初の白ガス管・鋳鉄ライニング鋼管からステンレス管に随時更新されており、問題点の早期解決が図られている。全般的な維持運用状態は良好であり、経過年数を感じさせないのは維持保全にかかわる人たちの苦労が、にじみ出ていると言える。又、照明器具関係の安定器・ソケット部分が耐用年数を迎えている事から、更新計画に基づき早期に更新されることが、今後の良好な維持運用に必要不可欠な事と言える。電気・空調・給排水衛生設備全般についても、更新計画の策定が求められる。

 教団内に営繕・管理部門を持ち、自ら施設の維持管理計画を作成し、計画的な維持管理を実施している。また、保全・清掃行為は同志の手により誠実に実施されている。その結果、本建物は建設後40年を経過した今日でも、コンクリート打放しの外観をはじめ内部空間に至るまで竣工当時の様相が維持されている。