第30回BELCA賞ロングライフ部門表彰建物 |
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西脇市立 西脇小学校 |
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所在地 |
兵庫県西脇市西脇656-1 |
竣工年 |
1937年 |
建物用途 |
教育施設(小学校) |
建物所有者 |
西脇市 |
設計者 |
内藤克雄(新築)、足立裕司(改修)、鞄燗。設計(改修)、遠藤秀平建築研究所(改修) |
施工者 |
正木組(新築)、葛g住工務店(改修)、潟tジイ工芸(改修) |
維持管理者 |
西脇市教育委員会 |
西脇小学校は、明治34年(1901)に近在の小学校を統合して津万尋常高等小学校として設立され、現在の3棟建ての校舎は昭和9〜11年(1934〜1936)に建て替えられたものである。その後戦時下の金属供出や台風被害、阪神淡路大震災など幾多の災難に遭遇しながらも90年近くに亘り現役の校舎として使用され続けたこの木造校舎は、地域の象徴として市民の誇りであったという。 2012年には耐震性能不足と診断され、一旦は取り壊して新しい校舎を建設する計画が出されたにもかかわらず、卒業生や市民、更には日本建築学会からも保存要望があり第三者による審議会での検討を経て、3棟とも保存・改修し引き続き小学校校舎として利用することが決定された。このことからもこの木造校舎がこの地域の市民にとって重要なシンボルであり、且つ建築史的にも意義のある建物であることは明らかであろう。 改修工事にあたっては、西脇市教育委員会、神戸大学の研究者・建築家、設計者(元設計者の創設した設計事務所)、施工者が一丸となって地域に根差す小学校として長期使用の観点からのアプローチにより一年に亘り調査・検討が進められ、構造補強、防火防災設備、温熱環境整備、騒音対策、スロープとエレベーター新設によるユニバーサルデザイン化等最大限の配慮を行っている。更には文化財としての保存と復元にも重点を置き、各所の色彩の調査による復元や、屋根を銅板葺きから当初のセメント瓦に近い雰囲気を持つ金属瓦に変更するなど歴史的建造物としての文化的な価値も損なわないように保存と活用を実施している。 工事にあたっても、「居ながら工事」による段階改修を行うことで学校イベントを極力妨げない配慮がなされていると同時に、仮設校舎を最低限に抑え工事費を削減するための工夫もうかがえる。 また、維持管理に関しては改修工事に先立って「西脇小学校保存活用計画」を作成し、将来的にも西脇市、兵庫県との合意事項として維持管理に努めていくことを決定している。維持保全計画は令和40年度までを当面のスコープとして策定されており、20年周期で大規模改修を実施することにより、機能を維持していく計画となっている。 保存に至った経緯からも市民に愛されている建物であることは明らかであるが、何よりも現地での子供たちの明るく元気な姿が印象深い。現代における単なるノスタルジーではなく、教育の原点に帰り設備や機能を現代的にアレンジし、更にこれからの長期使用に向けて建物を生まれ変わらせた、まさにロングライフ部門の受賞に相応しい建築である。 |
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