30回BELCA賞ロングライフ部門表彰建物



神戸商工貿易センタービル

所在地

兵庫県神戸市中央区浜辺通5-1-14

竣工年

1969年

建物用途

事務所・飲食店舗・駐車場・他

建物所有者

叶_戸商工貿易センター

設計者

鞄建設計(新築・改修)、鹿島建設梶i改修)

施工者

鹿島建設梶A鰍ォんでん、新菱冷熱工業梶A川崎設備工業

維持管理者

叶_戸商工貿易センター
 神戸商工貿易センタービルは神戸開港100年の記念事業として神戸の商業、工業、貿易業の中心となるように、貿易や海運などの関連企業・団体を収容するビルとして神戸市と関西の経済界が協力して計画し、1969年に西日本初、日本でも二番目の超高層ビルとして竣工した。
 超高層ビルには高度な耐震・耐風構造が求められるが、当建物においては外周のベアリングウォールと称する短スパンラーメンと内部コア周りのプレース付ラーメンより成るダブルチューブ架構になり、これを実現している。さらに徹底した軽量化(2階以上S造、デッキプレート、内外装材)を図ったことにより、1995年阪神・淡路大震災では周囲の多くのビルが潰滅的な被害を受ける中で、震度6以上の直下型地震に耐え、その耐震性が証明された。構造体に大きな損傷はなく、震災で倒壊した市庁舎の仮庁舎や医薬品集配センターとして、震災後の市民の相談や手続き対応など、神戸の復興の拠点としての大役を担った。
 竣工30年目となる1999年建物の調査・診断を実施してビルの将来のあり方を反映した「リニューアル工事基本計画・設計書」を作成し、循環型社会の構築と環境問題を軸としたリニューアルを進めるために、NEDOの補助事業を活用したESCO事業(2003年工事着手、氷蓄熱システム、各電動機INV制御、高効率冷凍機・ボイラー・変圧器・照明設備他導入:事業期間2005〜2009年)に取り組み、省エネルギー改修工事を実施して省エネ率22%を達成した。あわせて竣工当時の姿を取り戻し、更なる長期使用を目的に外装塗装の修繕工事が実施された。2009年には「再生事業計画」を策定し「100年ビル」を目指して、長く愛され使用し続けられる建物として保全していくことを明確にしている。
 2008年〜2010年に実施したオフィス窓際空調の大規模改修では、先の省エネ化とあわせて空調負荷の見直しにより熱源容量の低減を行い、テナント執務者の住環境の機能向上と更なる省エネ化を図っている。その後、各階共用部トイレ等のリニューアル、防災設備の更新等にも着手し、建物の健全性と利用者の利便性を見据えた維持保全が継続されている。
 2017年水害リスクの対策を主に、災害時のビル機能継続のために必要な対策を設計者が「BCPコンサルティング業務報告書」としてまとめ、建物再生事業計画とともに長期使用に向けた前向きな提案としてその後の計画に活かされている。
 竣工50年目の2019年「再生事業計画」には老朽化設備の更新はもとより、建築物のライフサイクル、テナントニーズ、社会環境の変化の動向を考慮した、竣工60年の姿を視野に計画が取りまとめられている。100年ビルへの挑戦として短期(2024年までに実施)、中長期(2029年、竣工後60年)、長期(竣工後70年、80年)に分けて、再生事業計画の実施を目指している。
 時代と共に変化するテナントのニーズや、競争力向上のため、シンボルとしての外壁保全、現行法への対応や地球環境への配慮などの法適合・時勢への適合、ビルを長期にわたり維持継承していくためのテナントニーズ及び社会環境を考慮した維持管理計画を立案し、長きにわたり実施していることは高く評価できる。

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