第28回BELCA賞ロングライフ部門表彰建物 |
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山梨文化会館 |
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所在地 |
山梨県甲府市北口2-6-10 |
竣工年 |
1966年 |
建物用途 |
事務所、 テレビ・ラジオスタジオ、飲食店舗 |
建物所有者 |
且R梨文化会館 |
設計者 |
樺O下都市建築設計 |
施工者 |
三井住友建設 |
維持管理者 |
且R梨文化会館 |
JR甲府駅北口に立つ山梨文化会館は、山梨県のマス・メディアの中核企業体を収容する総合社屋である。建設企画当初の山日YBSグループ代表
野口二郎氏は「いつでも、どこでも、どんな状況にあっても個人や地域の情報要求にこたえられるよう整備しておくことが、情報産業の義務である」という信念を持ち、丹下健三氏に設計を依頼、1966年に竣工した。 4つの異種の機能が、関係性を保ちつつも独立性を有し、かつそれぞれに発展性を備えるというプログラムに対して、丹下氏は直径5mの円筒形シャフトを4×4列、計16本配置した上で、その間に梁を掛け渡し、必要に応じて床を作るという立体格子構造システムを提示した。当時、氏が構想していた「成長する建築」を具現化したものと言える。同様の構想を抱いた建築家は少なくなく、幾多の斬新な計画案が耳目を集めたが、実際に建設され、かつ趣旨通りに増築・改築が繰り返されて成長し、使用者に好意をもって使われ続けた建築はほぼ皆無といえる。重要な近代建築の記録・保存活動を行う国際組織DOCOMOMO(ドコモモ)日本支部により、「日本の近代建築100選」に選定されたのはもっともで、世界に誇るべき建築である。 竣工以来これまでに7回の改修が行われてきた。1974年の第1期改修は大規模で、北東部に6・7・8階、南東部に5・6・8階の増築がなされた。2000年の第4期改修では外装PCの壁と手摺をアルミダイキャストへ全面的に取り換えて耐久性向上と軽量化が達成された。 2005年の第5期改修では増床して、輪転機撤去後の空間に報道スタジオがつくられ、2013年の第6期では第1期以来となる各所の大規模な改修が行われた。 竣工後50年を迎えるにあたり、2015年には今後少なくとも50年は使い続けるための意志表明として「山梨文化会館100年計画」が掲げられ、それに基づき第7期となる耐震レトロフィット工事が計画された。その条件は、外観を損なわないこと、予想される巨大地震後も情報発信拠点としての機能を喪失しないこと、工事期間中も24時間業務が停止されないことであった。 この厳しい条件をクリアーするために、地下2階での中間階免震が計画され、実施に移された。1本のシャフトには免震装置4本が配されている。構造の仕組みから、地震時に16本のシャフトの柱脚には大きな変動軸力が発生し、免震装置に引張力が働くため、引張対応の装置を適宜配している。これらの他にも間柱や外周部など、必要に応じて異なる種類の装置を配置している。5種類の装置の総数は128基にのぼり、これに伴い設備配管について免震クリアランスの確保、接手のフレキシブル化を行っている。すべて予定通りに進んだのは、設計者と施工者の技術力と周到な作業の賜物であろう。 これまでの半世紀にわたる増改築と維持保全の営みは、企画・実施・管理のどの局面からみても通常のレベルをはるかに超えている。それは、建築の物理的な耐久性を保持しようとするに留まらず、社会の要請や時代の流れに対して時をおかずに応じようという施主と管理者の強い意志の表れであると解釈される。甲府駅前のシンボリックな存在として地元民から広く認知され、愛され続けている理由もそこに端を発しているに違いない。 加えて、これからの半世紀を見通した周到な維持保全計画が作成されている。計画書は、これまでもそうであったように、固定的ではなく、状況の変化に応じた有効な対処へと書き換えられ、充実していくはずである。その過程は他の管理者や設計者にとっても大いに参考となるはずである。 |
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