第27回BELCA賞ロングライフ部門表彰建物 |
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町田市立国際版画美術館 |
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所在地 |
東京都町田市原町田4-28-1 |
竣工年 |
1986年(昭和61年) |
建物用途 |
美術館 |
建物所有者 |
町田市 |
設計者 |
大宇根・江平建築事務所[現 大宇根建築設計事務所] |
施工者 |
大成建設梶A小田急建設梶A高尾建設 |
維持管理者 |
町田市 |
我が国で唯一、世界でも珍しい「版画」をテーマとした美術館である。 「開かれた美術館」として、市民がいつでも自由に利用でき、鑑賞・創作・発表などの諸活動を通じて、積極的に美術に親しむまちづくりを目指している。 都市のオアシスとして市民に潤いとやすらぎを提供するという目的から、敷地は「芹ヶ谷公園」が選定され、「自然と一体化した美術館」を基本コンセプトとして設計・建設されている。 1987年に開館して31年が経過するなか、各種イベントや公開講座などの幅広い活動が定着してきており、本美術館が「開かれた美術館」、そして市の文化芸術活動拠点として市民にしっかりと位置づいていることが強く感じられる。特に版画工房やアトリエは、各種版画用の設備に加えバックヤードの充実もあり、市民利用も活発である。 これらはそもそも設計者が設計時に、展示・教育普及・収蔵・学芸・管理という美術館の基本性能について、学芸員や管理者と徹底して検証してきたからこその成果といえよう。短い動線計画や、特別な作業を伴わない展示替えの工夫など、細やかな設計上の配慮が、学芸員や管理者にとって「自分たちの美術館」、「愛すべき建築」と感じられるように昇華していったようである。 外装はコンクリート躯体の外部側を断熱材で包み、空気層を設けた上でその外側にb器質レンガを積み上げるという外断熱工法を全面的に採用し、建築そのものとしての断熱性向上、大きな省エネルギー化をはかっている。 ただしこの工法の採用に当たっては、凍害や白華現象が将来発生しないように、レンガの選定、躯体への固定方法、銅板水切りのディテール、目地積みモルタルの調合など、施工前に綿密な検討が加えられている点、感服させられる。 結果、30年を超える歳月の汚れを全く感じさせない外観を維持し続けている。時代の風雪に耐えてゆく、否、逆にさらに風合いを増していっていると言っても過言ではない。 「素材と工法によって裏付けられた、基本に忠実な建築をつくる」という基本ポリシーを堅持した関係者の信念を大いに評価したいところである。 また、設計者が策定した長期修繕計画に基づいて、設備を中心とする様々な改修工事が適切に実行されている。市の施設として維持管理予算の制約もあろうが、設計者・施工者・アフターメンテナンスが三位一体となって当たる、愛情のこもった対応が実感される。 2016年には市が「芹が谷公園再整備基本計画」を制定し、「まちなかで人と緑が出会う、ふれあいの芸術の杜」の中心施設として本美術館が位置づけられた。ミュージアムショップ、レストラン、図書・メディアコーナーの拡充や夜間運営に向けた改修計画が検討されているようである。これらの機能の、公園側への顔出し、開放、さらには版画工房やアトリエでの市民活動の表出など、今後施設運営も含めたさらなる拡充・発展が期待されるところである。 |
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