第27回BELCA賞ロングライフ部門表彰建物 |
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群馬会館 |
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所在地 |
群馬県前橋市大手町2-1-1 |
竣工年 |
1930年(昭和5年) |
建物用途 |
公会堂 |
建物所有者 |
群馬県 |
設計者 |
佐藤 功一(新築)、群馬県(改修)、協同組合群馬県建築設計センター[叶ホ井設計、滑ロ進建築設計事務所、渇コ田設計](改修)、轄竭q建築研究所(改修) |
施工者 |
井上工業(新築)、佐田建設梶i改修)、利根電気工事梶i改修)、金井興業梶i改修) |
維持管理者 |
群馬県総務部管財課 |
群馬会館は1930年(昭和5年)に昭和天皇の即位を記念して建設された群馬県初の公会堂建築である。設計は早稲田大学大隈記念講堂などの設計で知られる佐藤功一。群馬県庁舎や前橋市役所と隣り合う前橋の中心地にあって、その外観はシンボル的な存在として親しまれ、館内にはホール、会議室、食堂等があり、現在に至るもなお良く活用されている。 ホールは築後90年近くのあいだに数度にわたって改修されている。1968年に最初の大規模な機能改修を行った際に当初の内装は大きく更新された。1983年には迎賓館的な使用に合わせて木目系から白色系のインテリアへ、また1308席から664席へと変更。1995年には県庁舎建替えに伴って一時的に議場となり、2年後には再び410席の公共ホールに戻された。そして2015年に天井の耐震化と合わせて内装の全面更新がなされた。創建当初の意匠を蘇らせるという方針のもと、当時の設計図が現存せず、関連資料が乏しい中、現地調査、残されたわずかな写真、佐藤功一設計の他の事例などを手掛かりに、4つの門型フレームを特徴とする空間を現代の技術と材料で見事に構成している。覆われていたバルコニー席下の梁のハンチを表しとする、石膏レリーフが施されていた化粧梁をFRP製に置き換えて表しとする、壁面の金唐革紙を異なる素材で再現する、天井照明は既存に手を加えて再利用し、外光を取り入れていた壁面の窓は補助照明として復活させるなど、その手法は自在にして適切であり、施工は細部にいたるまで周到で丁寧である。その成果は格調高く、かつ艶やかなインテリアとなって見る者を魅惑し、昭和初期に固有の世界へと誘う。 他の部分の改修についても、耐震補強や空調・電気設備の更新をはじめ、ホール改修と同時または別途に、適切な時期になされてきている。上記2015年のホール改修は、その2年前の劣化診断の結果を受けて立案された5ヶ年計画の初年度として、他の改修と並行して行われたものである。維持保全の計画はさらに築百年の2030年まで詳細に立てられていて、今後はエレベータ、給排水設備の更新が計画されるなど、確実な機能の維持が期待できる。 こうして求められる機能や用途が激しく変わる中で、外観の意匠を創建当初の意匠のままにとどめる一方(国の登録有形文化財に指定されている)、内部空間は時代の要請に応えて極めてダイナミックに更新しながら、常に変わらず高い品位を守り、さらに近年には当初の意匠に戻す英断を下して十分な成果を得たことは、同様の状況にある他の建築物の良き範例となるに違いない。 |
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