第26回BELCA賞ロングライフ部門表彰建物 |
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調布市総合体育館 |
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所在地 |
東京都調布市深大寺北町2-1-65 |
竣工年 |
1985年(昭和60年) |
建物用途 |
体育館 |
建物所有者 |
東京都調布市 |
設計者 |
葛v米設計 |
施工者 |
鹿島建設梶A林建設 |
維持管理者 |
公益社団法人 調布市体育協会 |
東京都立の神代植物公園という敷地の条件から、法的な高さ制限や建蔽率に厳しい制限があり、体育館を地中に埋設し、屋上を植栽で緑化、まさしく公園の中のおおらかな起伏の一部となるようデザインされた総合体育館である。 このような建築的特徴を活かして設計時点からライフサイクルコストの低減を見据え、地中埋設による冷暖房負荷の低減、自然採光、自然通風、熱源機器の排熱利用等、積極的な省エネルギーにチャレンジしている。1985年の竣工であり、このような環境建築の先駆的な存在である。 竣工から30年以上が経過して樹木が大きく育った現在、建築はほとんどその姿を消し、起伏のある公園そのものとなっている。日常の清掃や植栽の剪定、軽微な補修など、日常のメンテナンスも的確に行われ、子供連れの家族などが公園化した屋上で楽しげに遊ぶ姿は大変ほほえましく、公共性を大いに発揮している点を大いに評価したい。 ただし年月の経過の中で、いくつか当初の設計コンセプトどおり運用されていないところが生じているようである。例を挙げると、競技の妨げになるということで、体育館の高窓からの自然採光、自然通風が利用されなくなっている。それに対する改修として機械換気の補強を行なったようであるが、地中ピットをクールトレンチ(あるいはウォームトレンチ)として活用できなかったのかなど、せっかくの地中埋設建築の特徴を活かした積極的な改修に至らなかったことが惜しまれる。しかしながら、ロングライフ建築として次の計画的な改修のタイミングがやってくる。その折には、ぜひ環境建築として先駆的かつ前向きな改修計画を実行されることを期待するものである。 いずれにしても、市民の健康増進施設として年間19万人に利用されるほどの人気であり、年間を通して予約で埋まっていると聞く。その中で、休館日が月に2日と少なく、開館時間も9時から21時と長いため、現実のメンテナンスの苦労は想像に難くない。特に屋内温水プールの年間利用は省エネルギーのみならず、結露や鉄骨部材の腐食など、大変課題が多い。そのような困難な状況の中で、大きな問題なく施設全体が運営されている点は評価したい。 一方、市の施設であることから、市の「公共建築物維持保全計画」に沿った標準的な維持管理がなされており、地中埋設建築という本建物の傑出した特徴に沿ったメンテナンスに及んでいない点が惜しまれる。また、現時点では災害時の広域避難施設としては位置付けられていないらしく、その面での整備が行なわれていないようであるが、上記の維持管理計画と共に今後見直しされることを期待したい。 |
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