第26回BELCA賞ロングライフ部門表彰建物 |
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カトリック布池教会 |
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所在地 |
愛知県名古屋市東区葵1-12-23 |
竣工年 |
1961年(昭和36年) |
建物用途 |
教会(聖堂) |
建物所有者 |
宗教法人 カトリック名古屋教区 |
設計者 |
且R下寿郎設計事務所[現 且R下設計] |
施工者 |
樺|中工務店 |
維持管理者 |
宗教法人 カトリック名古屋教区 + 畔柳武司 |
カトリック布池教会(正式名:名古屋カテドラル聖ペトロ聖パウロ大聖堂)は1961年に竣工したカトリック 名古屋教区(愛知・岐阜・富山・石川・福井の5県)の司教座聖堂である。 名古屋駅から地下鉄で7分程の新栄町が最寄り駅で、周辺は高層建物もあるものの大聖堂の存在感は今なお健在であり、創建以来、2万組を超える結婚式が執り行われるなど、親しみと憧れの対象となっている。 設計は後に「霞が関ビルディング」を設計することになる山下寿郎である。日本におけるカトリック教会の成り立ちであるゴシック様式を尊重しつつ過度な装飾を排し、近代的合理性、機能性を兼ね備えた建築を目指している。 外観は、鉄骨による鐘楼が乗った「双塔」と、現場打ちコンクリートによる繊細な装飾が施された入口上部の「尖頭形窓」が特徴である。平面形はバシリカ型に近いが左右の側廊を付けず、典礼の変化への対応、収容人員を優先させている。大聖堂内部は、側廊分の気積が大きくなることで音響特性に優れた空間(内壁の一部は吸音材に改修)となり、ステンドガラスを通した柔らかな自然光で満たされている。内壁の石調仕上げや内陣のリブボールト、礼拝室の梁型の仕上げは左官の手による丁寧な施工で現在まで大きな改修の必要もなく、美観が維持されている。 構造については、双塔部や内陣は鉄筋コンクリート、梁間18mの大空間である身廊部分は鉄骨鉄筋コンクリート構造を採用し、当時の建築生産エンジニアリングを活かしている。耐震診断でIs値0.6以上が確認され、耐震補強の必要もなく、半世紀以上を経過した今でも竣工時の姿が保たれている。 外装は杉板型枠によるコンクリート打ち放し仕上げで、1985年の外壁改修における浸透性撥水剤塗布と、その後は10年毎のコア抜き検査を実施、2015年の大規模改修では一部に躯体の割れや劣化等が見られたため、補修の上、塗装している。杉板の風合いが薄れてしまったのは残念だが、耐久性を重視した結果なのであろう。 その他にも、献堂50周年を経て教区司教座聖堂として重要な役割を果たすべく、徹底した維持保全と機能改善がなされている。竣工時にはガス暖房しかなかったが、築後46年(2007年)の時点で冷暖房が追加・改修され、受変電については築後43年(2004年)に改修されている。特筆すべき省エネ改修はないが、バリアフリー化はトイレ・昇降機・スロープ等徹底して実施されている。また「背面式ミサ」から「対面式ミサ」へ典礼の変化に応じた内陣の拡張や祭壇の更新も行われている。維持管理については、多くの信徒による献身的な奉仕がなされ、特に清掃については床タイルのワックス掛けのみならず、剥離作業までもがプロ同等の出来栄えである。100周年に向け、聖堂の機能保全に対する意識は高く、2015年の大改修を経て、さらに30年間の詳細な改修計画が作成されている。引き続き信徒や地域住民に愛され、長期に継続的使用が期待される建築物である。 |
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