第25回BELCA賞ロングライフ部門表彰建物 |
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武蔵大学江古田キャンパス 大学3号館・大講堂・根津化学研究所 |
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所在地 |
東京都練馬区豊玉上1-26-1 |
竣工年 |
[大学3号館]1923年(大正12年) [大講堂] 1928年(昭和3年) [根津化学研究所]1936年(昭和11年) |
改修年 |
[大学3号館]2005年(平成17年)、2012年(平成24年) [大講堂]2011年(平成23年) [根津化学研究所]2010年(平成22年) |
建物用途 |
大学(講義棟・講堂・研究棟) |
建物所有者 |
学校法人 根津育英会武蔵学園 |
設計者 |
清水建設梶i大学3号館新築)、佐藤功一(大講堂新築)、佐野利器(根津化学研究所新築)、 蒲髢リ建築事務所(上記改修) |
施工者 |
清水建設 |
維持管理者 |
学校法人 根津育英会武蔵学園、兜髄エンタープライズ |
武蔵大学江古田キャンパスは、西武池袋線江古田駅から徒歩6分、中学・高校・大学の施設が約60,000
uの 敷地に配置されている。90年以上を経過するキャンパスには大きな樹木が多数管理保存され、中央の濯川沿いには豊かな緑地帯が整備されている。建設年次も用途も異なる多くの学園施設がこれらの緑と良く調和し、潤いのある落ち着いた景観が創り出されている。広い敷地で長年に亘って多数の建物を維持管理してゆくには、敷地内動線と設備インフラの整理が重要である。当キャンパスの大学ゾーンでは、3号館の正面、両翼に面したキャンパス軸を骨格として整備が行われてきた。この軸は日常の主要動線だが、東の軸の地中には共同溝を設けている。この共同溝は設備幹線の管理の合理化ばかりでなく、更新工事も容易にし、キャンパスの景観維持にも寄与している点で非常に有効である。 今回の対象建物は大学施設の3棟、大学3号館・大講堂・根津化学研究所である。大学3号館は1923年に竣工。その後複数の増改築を経て現在に至っている。「新たな機能を付加して保存」されている。南側に図書館を増築しているが、大学のキャンパス軸に面する外観はほとんど変わらない。外装サッシュや内部の建具など、内外とも当初の意匠を生かすように改修が行われている。また、1階にエネルギーセンターと中央監視室を移転し、共同溝を利用してキャンパス全体のインフラ整備と維持管理機能の向上を図っている。長期使用に対する適切な配慮がなされている。 大講堂は1928年に竣工。その後、経年劣化に伴う改修の他、「性能を向上させて保存」するために耐震性・居住性改善の改修を行っている。外装タイルやサッシュ、屋根や天井など、いずれも当初の意匠を丁寧に生かした改修である。設備改修においては、窓側のキャットウォークに設置してあった側面ダクト吹き暖房機を撤去して、換気が無かった空調設備を天井吹出し冷暖房設備に改修して利用可能期間の拡張を図っている。照明設備については建物全体をLED化し、シャンデリアは創建当時の物に補強と部品メンテナンスを施し、光源にはLEDを使用して省電力・省メンテナンスを実現している。いずれも、旧来の大講堂としてのイメージを変えることなく維持保全を行っている。 根津化学研究所は1936年に竣工。1988年に、研究所はそのままで上部を覆うように9号館を建設している。現在は空調設備を設置して研究室や会議室などに使用されているが、当時のままの内装や家具を残した研究室が記念室として保存されている。上部を覆われていることにより雨がかりが少ないことも幸いして、記念的な建物として外観は良好に保たれている。 キャンパス内には他にも多数の施設が建設されている。用途も規模も異なる。その中で審査対象になった3棟は、キャンパスの歴史を継承して風景を創り出す重要な要素である。今後年を重ねて益々魅力的なキャンパスとなるためにも、引き続き3棟の維持管理が着実に実施され、長期保存の為の補修・改修が適切に行われていることを期待している。 |
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