25回BELCA賞ロングライフ部門表彰建物

大倉山ハイム3号棟〜8号棟住宅

所在地

神奈川県横浜市港北区大豆戸町875-4

竣工年

1979年(昭和54年)

建物用途

共同住宅

建物所有者

大倉山ハイム3号棟〜8号棟住宅管理組合

設計者

鞄建ハウジングシステム

施工者

鹿島建設梶A潟Jシワバラ・コーポレーション、YKK AP

維持管理者

住商建物
 大倉山ハイムは、東急東横線大倉山の駅から徒歩10分程の落ち着いた住宅街に位置する。竣工後37年を経た6棟636戸からなる大規模分譲集合住宅である。一団地認定と横浜市環境設計制度の総合的開発を用いて建物を高層化している。その結果として約70%の空地を生み出し、ゆとりのある街区を形成している。提供公園や敷地内公園では、年を経て大木となった樹木や豊かに茂った植栽、水景やベンチが適切に維持管理され、潤いのある憩いの場となっている。また、インフラは団地中央に設けたトレンチを経由して各棟に引き込まれているので、電柱やケーブル等がないすっきりした景観である。
 建物の設計段階において、長期使用を可能にするために2つのテーマが掲げられている。1つは、「永く健全で堅牢な構造体」の実現である。地震に対する様々な検討に基づき強度と靭性を確保した耐震設計を行い、建設当時としては画期的な10階建ての鉄筋コンクリート造である。新耐震設計法以前の建物であるが、1999年に行なった構造耐震診断では現行基準と同等以上の耐震性能を有することが明らかになっている。また、躯体の劣化を防ぐための外壁のクラック補修工事も既に実施済みであるが、今後の修繕計画でも予定されている。もう1つは、「設備の容易な更新性」の実現である。共用部から直接メンテナンスできる設備コアを有しているため、容易に配管の更新が可能であるとともに、住戸内の水廻りの可変性の需要にも対応できている。
 さらに屋上の外断熱化やLow-E複層ガラスのサッシュへの改修、直結増圧給水方式への改修、屋上換気ファンの更新、一般照明や外灯器具のLED化等が行われ、省エネと維持管理費用の削減を実現している。また、共用部の高齢者対策やバリアフリー化などの居住者のニーズの変化に合わせた改修も実施され、計画されている。
 維持保全については、竣工時に30年後までの長期修繕計画を作成し、管理組合と管理会社との間に信頼関係を構築する中で5年毎に計画を見直し、既に竣工後3回の大規模修繕に取組む等、しっかりとした管理体制が有効に機能し、現在も建物の基本性能と高い資産価値を維持している。
集合住宅は権利者が多いだけに維持管理の合意形成が難しい。特に、経年とともに物理的な改修の必要性は増大するばかりか、住民のニーズも変わる。ロングライフを実現するためには、他の用途の建物にはない課題がある。大倉山ハイムはそれらの課題を非常にうまく解決してきた事例である。

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