23回BELCA賞ロングライフ部門表彰建物

明治神宮 外拝殿

所在地

東京都渋谷区代々木神園町1-1

竣工年

1958(昭和33年)

改修年

2011(平成23年)

建物用途

拝殿

建物所有者

宗教法人 明治神宮

設計者

明治神宮臨時造営部、竃リ内修建築設計事務所(改修)

施工者

明治神宮臨時造営部、清水建設梶i改修)

維持管理者

宗教法人 明治神宮

伊藤忠太氏の設計により創建された明治神宮は先の大戦で本殿をはじめ主要な殿舎は灰燼と化したが、昭和33年に角南隆氏の設計により本殿、社殿などと併せ、外拝殿も日本古来の伝統木造建築として総檜素木造で再建され、国の内外から多くの参拝者を迎える明治神宮の施設として築50年を経過している。

兵庫県南部地震をはじめ地震の活動期にある日本列島において、殿舎の耐震性とその倒壊による人命に危害が及ぶ可能性を勘案し、壁が少なく、多数の参拝者を収容する祭祀が年に何度も行われる外拝殿が耐震化の必要緊急度の最も高い殿舎として選定され、耐震改修工事が実施されている。

耐震補強の目標としては、建物の地理的要件に沿い想定される大地震(サイト波)及び基準法で規定される極めて稀に起こる地震に耐え、利用者に避難する猶予を与える耐震性能を確保することとし、補強方針として既存の殿舎のデザインを毀損することのないよう、鉄骨を使用せず伝統木造技術を用いることとし、所有者と改修設計者の間で改修方針の明確な合意形成がなされている。

外観を変えない改修方法として、開放的な外拝殿の構造的要素を構成している内法長押、腰長押、小壁、大入れ蟻落し仕口の頭貫、腰壁に着眼し、これらを活用して太い柱の復元力を大幅に向上させる新たな構法が開発・実施されている。

具体的には、貫構造に代え中世以降化粧材として意匠的要素となっていた長押を接木により古代長押に戻し、主要構造要素として復活させている点が注目に値する。この長押と木ダボにより組み上げた板壁、柱、頭貫による構造要素をホゾ加工などにより一体化させたうえ、特別に鍛造した和釘を用い柱と長押をしっかり接合し、柱頭と柱脚の拘束力と同時に耐力と変形性能を高め、伝統木造建築の外観を変えない補強工法が採用されている。

小屋裏についても、鉄骨を使用せず檜材による火打ち梁やつなぎ材を追加し、屋根からの地震力を耐震架構に伝達し、捩じれやすい構造特性の殿舎を強固に一体化することにより耐震性の向上が図られている。

耐震性能の確認においては、本殿舎に採用された耐震架構の変形・強度特性に関わる実験データに基づき、最新の安全性評価手法として木構造にも適用可能な限界耐力計算法及び立体モデルによる時刻歴応答解析を実施し、2種類の解析検証結果を併せて所定のクライテリアをほぼ満たしていることが確認されている。

その他、格子天井や支輪裏板についても、古色塗装を施した無垢板により張り替えるなど丁寧に改修されている。

長期使用に向けての維持管理に関しては、本殿舎では難易度の高い電気、空調、防災等の設備類は無いが、明治神宮内苑で維持管理の組織体制を組み、中長期の維持管理計画に基づき木部や屋根の修繕を中心に伝統建築の維持管理を営繕担当、営繕工作室が主体となり実施されている。

このように、伝統木造という経験工学的技術による建築を地震リスク評価をはじめとする現代の先進的構造技術により過去の技術を復活・改良し現代に蘇らせた改修は今後の寺社仏閣の耐震化に向けた優れた事例として高く評価することができロングライフ部門のBELCA賞に値する。

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